Creation College 2009
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同人製作で食べていけるか?

同人製作で食べていけるか?
旧Cカレの「DigitalWorks−起業のすすめ」という記事の発展的改題にあたるコラムです。
鷹月ぐみな / Update: 2009/05/24 00:27:00

 「ゲーム製作で食べていけるか?」という質問に対しては「実際にゲーム業界で働いて食べている人達はたくさんいる」という答えになりますが、では、どこかのゲーム会社に入るのではなくて、「個人あるいは数人で起業するか、あるいは同人ソフトの製作・販売で食べていけるか?」という質問にするとどうなるでしょうか。
 こちらも「実際にそうやって食べている人は結構いる」ものの、割合からすれば多くいるわけではありませんし、それだけで生計をまかなうためには実力もさることながら、まずもって18禁ソフトでないと厳しいという現状があります。

 ともあれこのコラムでは、売れる同人ソフトの作り方……ではなくて、別の観点から。「これを仕事とするとして、いくら稼ぎたいだろうか?」というトピックで考えてみたいと思います。
 中には、「好きな事を仕事にできるなら、何とか食べられる程度であれば構わない!」と思う方もいるでしょう。実際、強烈な目的感を持っている方ならこれは可能です。ボランティアとして海外で働く人達などがそうでしょうし、メディア系でいうならばアニメーターがそうでしょうか。アニメーターは名前が売れるまでの下積みの間は、かなり高い技能を要求される仕事なのにも関わらず、衣食住で一人暮らしするには厳しいくらいの賃金しか貰えなかったりするものです。中にはギブアップする人もいるとはいえ、これで頑張れちゃうのだから凄いものです。昔の匠職人の世界ですね。
 普通の人の場合は……ギリギリの生活をしていると結構惨めな感覚になります。高校や大学時代の知り合いと顔を合わせたとする。彼らはいまやサラリーマンとして、生活に困らないだけの収入を得ている。中にはすでに結婚した人もいて、子を養っている人達もいる。こういう状況の中でモチベーションを保つというのは結構辛いものなのです。
 従って、ゲーム製作など食べていく場合についても、普通の仕事をしている人達と同水準、あるいはやや劣る程度の年収は稼ぎ出すことがモチベーションの維持に繋がるわけです。では、「普通の仕事をしている人達」って実際いくら貰っているのでしょうか。(パイロットや銀行員とか医者とかTV局員など、明らかに貰っている業種は例外)
 平成19年度の国税庁調査による民間サラリーマンの平均年収を見ると以下のようになっています。(職種はまぜこぜ)

【男性】20〜24歳: 271万 25〜29歳: 381万 30〜34歳: 463万
【女性】20〜24歳: 231万 25〜29歳: 295万 30〜34歳: 300万

 なおこれは年収ベースであり、実際には税金がここからしょっ引かれます。所得税・年金・健康保険・市民税などで、普通は給与の2割くらい減ったものが手取りになります。ちなみに筆者はIT業界の人間ですが、業界平均ちょい上くらい、要するに500万は貰っています。
 上記のデータでも、年齢別にだいぶ違いが出ていますが、個人製作の世界では自分のトシが上がったからと言ってそれによって売り上げが上がるなんてことはありません。従って男性であれば、350〜450万くらいが、「最低これくらい稼ぎ出したいレベル」ということになるでしょうか。そしてもしもこれ以上稼ぎ出したのだとすれば、モチベーションが上がることは間違いないでしょう。朝はレストランでモーニングしながら企画を練り、家では特注の椅子と特注の鉛筆やノートを使い書き物をし、最新鋭のPCを使って作業をする……現実に、個人系製作をやってる人でこの領域まで達する人がどれくらいいるかはともかく、生活を楽しめるレベルであればあるほど心の余裕ができ、色々な発想が生まれてくるものです。

 なお、これは目標ラインの話でした。観点を変えて、「モチベーションはともかく、(一人暮らしで)生活できる最低ラインはどれくらい?」についても見ておきましょう。
 家賃5万、食費3万、光熱費通信費等2万で計10万円。さすがに多少の雑費は掛かるでしょうからこちらに2万を計上し、12ヶ月でかけると144万円。フリーターの平均年収は160万円と言われていますのでこんなものでしょうか。もちろんこれでは親戚の子供にお小遣いをあげる余裕はありませんし、結婚式に呼ばれてご祝儀を払うのも厳しいでしょう。最低でもこのラインを割るようであれば、本業としてこれ一本の個人・同人製作で暮らすのは無理、ということになります。この場合、フリーターと兼務ということになると思いますが、そうなれば開発にかける時間もそのぶん減ることになり、生産性も同時に落ちてしまいます。

 以下は雑な計算となりますが、赤線ラインを150万円、希望レベルを450万円としまして、作ったソフトウェアを一本1000円で販売するとすると、何本売れれば良いかを考えてみましょう。
 赤線ラインは1500本、希望レベルは4500本、となります。しかしこれは生産にかかる費用や、委託時の手数料などの考慮がなされていませんし、そもそも1人頭の場合のお話ですから、数人で作った場合はこの数倍掛けの売り上げが必要になってくるわけです。こう考えれば個人製作で生計をまかなうなり平均年収に匹敵する額を稼ぎ出すことは容易な事ではないと理解できることと思います。

とりあえずのまとめ
 18禁系ではこのようにして暮らしている人が結構いるのは事実ですが、それにしても絵師やグラフィッカーの存在は不可欠ですし、ある程度の自信がないとできない事です。
 既に仕事を持っている人であれば、いきなりこのような生活に入るのは無謀ということで、副業という形でどれだけ自分が稼ぎ出せるかを試してみてから実行に移すのが無難と思われます。18禁でなくても、何かうまいサービスモデルを提供することができれば、ひょっとしたらうまくいく可能性も秘めているのがデジタルワークス系の分野だと思っています。この底記事となった「DigitalWorks−起業のすすめ」で触れたとおり、デジタル物は生産・在庫管理にかかる費用が通常の商売に比べると圧倒的に少ないため、少ない資産で大きな利益率をあげられる可能性があるわけです。

 ただ、これで食べていくというのは趣味を仕事にする、というよりも仕事の手段に趣味を使うということになり、楽しくやっていけるかは……どうでしょうか。儲けるためにどうするか、という観点はかならずしも自由闊達な創作につながるわけではありません。まあこれはゲーム会社に就職した場合だってそうなのですけれど。
 こういう道に進むにしろ、まずは純粋趣味の分野で自分の作りたいゲームを何本か作ってみてから、はじめてその先へのアプローチを始めてみると良い……というのが現状、私の結論と言えます。


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