GAOGAO_REVIEW_01




1.ミューティアクロニクル、そしてデミノイドの世界
Author:鷹月ぐみな / Update: 2014/12/13 10:50:23


GAOGAO!」のシリーズ名称からも少し読み取れますが、この作品群は、変異体と呼ばれることになる獣系デミヒューマンの存在、そして変異体と人間との関係がをテーマとした物語です。
 変異体の外見上の見た目は、(美少女ゲームらしく)概ね良くある猫耳娘バリエーションといった感じになります。もちろん猫だけではなく兎や鳥などとの可愛いミュータントが多数登場することになります。(残念ながら筆者は獣耳属性が無い人間だったりしますが)
 この変異体の祖となる存在が第1部「ラジカルシークエンス」の時代にはじめて生み出され、一つの悲劇と、一つの前向きな結末を迎えることになるのですが、そこから長い長い時間をかけながら物語が進んでいきます。

a. 四部作と「ミューティアクロニクル」について


表題物語の舞台
ラジカルシークエンス(第1部)の世界現代世界(※1:1993年)
パンドラの森(第2部)の世界未来世界のドームシティ
第1部の現代世界の2014年12月にバイオハザードによる世界崩壊が開始
それから最低250年以上経っているものと思われる
ワイルドフォース(第3部)の世界第2部の世界の数百年後の地下世界
カナン(第4部)の世界第3部世界の1年後の地上世界
※1:ゲームの発売が1994年初頭。時代を感じさせますね(´-`)

 第1作目は現代世界の日常を舞台とした、ライトなノリの作品でした。日常を過ごしていた主人公が日常の中で突如ファンタジー的な存在と遭遇したというタイプの話で、一般人である主人公は作中でも大学に通いつづけています。エンディング後もおそらく普通に大学生活に戻っていたはずです。

 ところがそんな作品の第2作目が数か月後にリリースされたわけですが、
「世界が崩壊した」
 とあっさり綴られるオープニングで驚愕。
 さらに「舞台ははるかな未来」に飛んでしまい、プレイヤーが唖然としたのは想像に難くないと思います。実際筆者の私もオープニングを見て開いた口がしばらく塞がりませんでした。
 なぜそんな展開にする必要があったのか、これはシナリオライターである三峰奈緒氏の気まぐれではなく、最初から三部作を想定した構想の流れによるものでした。
 三部作は「ラジカルシークエンス」〜「ワイルドフォース」までの3作です。第1作の時点から「1st」と表題に冠されていました。そしてこの三部作で作品は一つの完結を見ています。しかし「カナン」という作品がもう一つ新たに生み出されました。「ワイルドフォース」へのユーザからの絶大な称賛を受けて、そのキャラクターを再登場させながら、三部作では書き切れなかった一番深刻なテーマへと正面から取り組むことにしたのでしょう。(一番深刻なテーマ、についてはカナンのレビューにて触れます)その結果、GAOGAO!は4部作という形で塗り替えられ完結しました。
 これらのシリーズについて、Windowsで「ラジカルシークエンス」のリメイクとなる「シルバージーン」が発売されました。残念ながら2作目以降は発売されないまま13年が経ち今に到ります。リメイク続作が出ないのは開発の体力が足りないことによります。また、ユーザの美少女ゲームへの好みそのものが変わってしまって、出しても利益を確保できないと判断し残念ながら凍結となったのでしょう。

 なお、「シルバージーン」において、「GAOGAO!」というシリーズ名は、より内容に即した「ミューティアクロニクル」という名称に置き換わりました(ミュータントの女性形?)。本レビューにおいても、四部作にまたがる物語そのものを指す場合はこの名称を用いていきます。

b. 「デミノイド」について

 1998年に筆者(鷹月ぐみな)が執筆した「GAOGAO!総合解析」ではこれら四部作の他に、三峰奈緒氏の手によるものではない別の作品を関連作品としてレビューしまして、当解析の最終節において併せる形で取り扱いました。それは、H.MIYABI氏が制作/監修した「ARMIST」および「メリーゴーランド」という作品です。

ARMIST(Basement/PC9801 X68000) - 発売:1992/07/03
メリーゴーランド(mischief/PC9801 Win95) - 発売:1996/03/08

※なお、本レビューで紹介する作品群のうち唯一「ARMIST」のみ18禁扱いではなく一般向作品となっています。但し、あからさまな死体こそないものの、多数の流血シーンが存在し、エロではないものの現代のCERO基準で言えばCERO-Z(グロによる18禁)に相当する可能性があります。

 なぜ別シリーズ、別ライターの作品を一緒に取り扱ったかと言いますと、
・上記2作品にも「デミノイド」と呼ばれる女の子の獣人が登場し、非常に似ていること
・GAOGAO!同様、彼らと人間との関係性を描いたお話であること
・H.MIYABI氏とフォア・ナイン(エクセレンツ)とは販売関連でのパートナー関係であったこと
・その他、展開の符合
 による関連・類似性による判断です。

1992年 - ARMIST(デミノイド)
1994年 - GAOGAO!3部作(変異体)
1996年 - メリーゴーランド(デミノイド)
1997年 - GAOGAO!完結編 カナン(変異体)

 GAOGAO!における変異体とデミノイドについては世界観も別で、直接の関係もありませんが(本人にそれとなく聞いたこともありました)、関係者の手による類似テーマを扱った2系統の作品群がこのように交叉するタイムラインの中で生まれている以上まったく無視して取り扱うこともできません。
 これを踏まえて当時のレビュー本において併せて解析する流れとなったわけです。文芸批評の分野において「比較考察」という考え方がありますし、両者を比較しながら見ていくのはアリかなと。
 今回の編集版においても似たような構成を取って進めていくことにしました。

 さて、いよいよGAOGAO!4部作のレビューへと入っていきます。このページの読者である皆さまも、当時のプレイヤーにでもなった気分で、四つの作品世界を古い方から順に旅するつもりで読み進めていってください。





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