Article:ユーザのゲームへの不満


 1つのゲームを取り上げて、何から何まで素晴らしいという事はまずありません。大概は何らかの不満点(これは要望とは別物ね)を感じさせるのですが、作り手側はこの「不満点」を出来る限り少なくしなければならないのです。これは作り手のメンバーが少なければ少ないほど気を付けなければいけない事項です。まあ、大手ソフト会社だって数百人いようが不満点だらけのゲームを出してきますけどね(笑)。ユーザーの要望に答えられないのは、こだわりすぎてるのか、それとも腕のいい企画者がいないのか、どちらでしょうか。以下はそんな「ユーザの不満」に関する記事です。なお、これを作成するにあたって、MSX−FANに掲載された「スーパーデータ学(12)/飯島健男」の記事を参考にしています。

Article Written: 97/9/20




ユーザは今のゲームに満足しているか
     MSXFANという雑誌のアンケートに、「いまのゲームに対して不満を持っていますか」という質問がありました。そしてこれの結果を見てみると、

    不満がある----78.6%
    不満はない----21.1%
    不明---------0.8%

     となっていました。アンケートはだいぶ昔のものですけれど、それほど比率変動はしていないと思います。80%近くの人が、やっぱり不満を持っていると答えているわけですね。まあ質問はやや抽象的すぎるので、一概になんだとは言えないところがあるのですが、こう示されている以上、作り手側はこれを重く受け取らねばいけません。「とりあえずゲームを作って、人に見てもらいたい」という理由が悪いとは言いませんが、不特定多数に発表することを目的とするならば、その理由では弱いかも知れません。ひとりよがりのゲームでは決して評価はされないようです。ユーザーは思っている以上に厳しいものです。



ゲーム内容面での不満
     さらにこのアンケートには、「ゲームに不満がある人に聞きます。内容面での不満を2つまで答えてください」というものがありました。作り手にとっては実に興味のある結果になりました。

    1、時間稼ぎと思われる所がある 58.3%
    2、絵が貧弱 25.3%
    3、むずかしすぎる 19.2%
    4、かんたんすぎる 18.2%
    5、広告と内容が違う 15.9%
    6、ストーリーがわかりにくい 13.4%
    7、ストーリーに関係ない謎がある 9.4%
    8、音楽があっていない 3.7%
    9、絵があっていない 2.7%
    10、その他 1.1%
    11、不明 6.6%

     これらについて、個別に説明させていただきます。



1、時間稼ぎと思われるところがある
     このアンケートはRPG全盛時代に行なったもので、おそらくRPGの経験値稼ぎや、無意味なフラグ移動に対しての意見なのだと思います。しかしアンケート記入者の実に半数以上がこれを指摘しているわけです。「ボリュームがないと、終わった後に不満をつけられてしまう。……何とかして、時間を伸ばそう」と策していることは見抜かれている訳です。
     また、これはただの指摘にとどまらず、ゲームを飽きさせる要因にもなっています。鷹月はゲームの基本は「適度な緊張感の連続」だと思っています。間延ばしさせたり、ストーリーに全く関係のない事柄に時間を割いてはいけないのです。


2、絵が貧弱
     最近の市販ソフトは、マシン性能の向上により解像度や色数が向上するといったハード要因の他、有名漫画家やイラストレーターを招聘し、絵が貧弱であることはそうそうなくなりました。いや、逆に絵だけに凝りすぎて、他の部分がおざなりになっているくらいですね。ただ、同人ソフトは基本的には絵が貧弱になってしまいますが、ユーザーはやはりこれを重要視します。「惹きつけるにはまずオープニングと絵の綺麗さ」とは事実に基づいた言葉です。時間がかかるのは仕方が無いものとして、出来る限りグラフィックには力を入れるべきなようです。


3、むずかしすぎる
     簡単に言ってしまえば「ゲームバランスが悪い」です。小人数で作ってしまう場合によくこういう不満が帰ってきます。作り手はゲームの全てを知っている訳なので、テストプレイする際にも「最良の手」を知らず知らず使ってしまいます。しかし遊び手はそうではありません。これを回避するためには、できるだけ多くの人にテストプレイをしてもらうことが必要です。彼らの意見を聞いてはじめて「あっ、そう言われてみれば……」と気づく部分がけっこうあるものです。


4、かんたんすぎる
     「むずかしすぎる」があったかと思えば今度はこれです。これも言ってしまえば「ゲームバランスが悪い」です。基本的にユーザーは、「普通」よりは「やや難しい」方を好みます。それはゲーム性という言葉にも置き換えられ、これが無いと、ただストーリーや絵を追っていくだけの、デジタルストーリーになってしまうのです。また、誰しも楽に解けてしまうようなゲームは、達成感を感じる事はできないのです。非常にこのバランス取りは難しいのですが、同じようにテストプレイ(デバッグ)の人数と時間を増やして、彼らの意見を聞く事がその解決に繋がるかもしれません。


5、広告と内容が違う
     基本的に売り手はゲームを売るために、広告には脚色を加えます。有名漫画家さんに、パッケージイラストだけ描いてもらい、それを広告にしようしたりします。ある意味「ゲームを売ってしまえば勝ち」なのです。まあもっとも、その後でユーザーの怒りが起こり、こういう指摘に繋がってしまうのです。同人誌を買っている人ならよく分かるのですが、「表紙のクオリティを信用するな。中身を見てから買え」です。
     この問題は受け流す訳にはいきません。事実上、ユーザーを騙しているわけですから。JAROに訴えてやる〜(笑)という事にはならないでしょうが、ユーザーの信頼を失っちゃ駄目ですよ。実際に自信があるならともかくとして。あとこれの関連として、最近では「餌」が多いですね。先に挙げた有名漫画家さんの他に、「有名声優を起用!」とか言って、台詞がほとんどなかったり、あったとしてもそれだけをウリにしてるというか。ゲーム内容で見せるのがほんとうのゲームなのに。あんたらポリシーないのか、どこかの会社さん(どことは言いませんが、色々……)。


6、ストーリーがわかりにくい
     小人数で作る場合はかなり気を付けなければいけませんね。自分は理解できても、他人が理解できないようなものは、作品としての形になっておらず、ただの自己満足になります。また、下手に壮大なストーリーにしようとして失敗したまま、お茶を濁して発表した場合もこの指摘がもれなく返ってきます。以前鷹月は、「ゲームの流れをそのまま小説にして、おかしい点を見せるものは作品として減点される」と書いた事があります。ストーリーのあるゲームを作るならば、ストーリーは練らなければいけません。不条理なものは無くさねばならないのです。


7、ストーリーに関係ない謎がある
     これは「1、時間稼ぎ〜」に関連していますね。こういう謎でゲームのボリュームを水増しするのは言語道断です。また、一本の作品のために世界観を構築したタイプのゲーム(通例のゲームはそうですね。ただ連作を基本としたゲームはこの限りではありません)は、その作品中に「伏線」と思われる謎は消化させねばならないのです。それが作り手の義務でもあります。でないと、ユーザーは消化不良を起こして、こういう不満点をぶつけてくる訳です。オマケで作る分には一向に問題はないのですが、その線をはみ出そうとしてはいけないのです。


8、音楽があっていない
     同人の人たちにはこれはつらいでしょうね。プロならともかく、音楽経験の無い人とかが作る場合もあるでしょうから(鷹月がいい例)。まあ、こういった不満をなげられないように努力し、投げられたらそれに対処するしかないんでしょうね。しかし、市販ソフトでこれを指摘されるのはもっと問題ですね。鷹月は「シナリオ」「グラフィック」「音楽」は作品の三本柱(ちなみに中枢がプログラミング)だと思っているのですが、その三本柱の一つがおかしいならば、作品としての完成度もガタ落ちするわけです。
     ちなみにこれは、音楽のうまい人に任せれば大丈夫というわけでは決してありません。そういう人たちに任せたからこそ失敗した例をいくつも知っています。大事なのは、音楽を作る人たちにゲームのイメージを徹底させることなのです。また、「ゲーム音楽? くだらんなあ。……まあ、金さえ貰えればやってもいいけどな」とかいう人には任せないほうが吉でしょう。ファルコムの某アレンジCDとかで、そういう事を仄めかした人もいたし……。


9、絵があっていない
     まあこれは好き好みにもよるので何とも言えないし、同人の人たちで「絵を描ける人間が一人しかいない」場合はそれこそどうしようもないでしょうしね。
     ただ市販に関して、個人的な意見を言わせてもらえるなら、「あまり有名な人を使うな!」ですね。絵がうまいのは当然です。しかし、ある意味でゲーム自体が没個性化します。その漫画家さんに手柄を持っていかれるような気すらします。また、「毎回同じ人が担当しないほうがいい」とも考えます。確かにファンができると、「またあの人がいいな」と思ったりするのですが、ファンでもなんでも無い人には、結構不満を募らせたりします。


 というわけで、ユーザーの不満点についての考察をしてみました。ただ先にも話した通り、このアンケートは随分と昔のもので、今行なった場合、かなり違ってくると思います。例えばアニメーションや声優に関する不満とか、キャラゲーに関する不満とか。その辺も改めて記事にしたいと思っていますので、よろしければ「私はこういう点が不満だ!」というものをメールでお寄せいただきたいと思っています。

- 鷹月ぐみな


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Written by. gumina(鷹月 ぐみな)