Article:制作言語の選択について
 さあゲームを作ろうという時に選ばなければいけないものがあります。それは、ゲーム制作ツールを使うか、それともVBやDelphiなど、一般的なプログラム言語で作るか、という選択です。ここでは、両者の長所・短所を挙げています。ツール選択の参考になれば幸いです。

- ツクール? スクリプト? プログラミング言語?
Article Written: 99/7/4




3種類の制作ツール
     最初に、制作ツールの種類について説明しておきます。

  • ツクール製品(ノンスクリプト型)
     プログラムの類を全く書かずにゲームが作れてしまうもの。アスキーの「RPGツクール」がその筆頭格。ゲーム制作の知識がなくても努力で何とかなるのが魅力的。但し、ツールはそれぞれ用途が固定されています。

  • プログラミング言語
     C言語、Delphiなど、汎用的にアプリケーションを制作するための言語。ツクールのない時代は当然これで制作するしかありませんでした。

  • スクリプトツール
     ちょうど両者の中間に位置します。ある特定のジャンルのソフトが作れるようなツールですが、具体的な動作はごく簡易的なプログラム(これをスクリプトと呼びます)で記述していくものです。

     大きく分けるとこの3つになります。ではこれから、それぞれの長所・短所を紹介していきましょう。なお、「スクリプトツール」は、大体はツクール製品と似通った設計思想なので、便宜上そちらに分類しています。



ツクール製品の長所
  • プログラム言語の知識が基本的には不要。スクリプトものは一見してプログラムに見えるが、実際には別物で、取り組んでみるとさほど難しくない
  • 予めゲームの為にチューンされているため、ゲームらしく見せるいくつかの努力が不要
  • そこそこのユーザインターフェイス(UI)を最初から実装している(この重要性はゲームをやりこんだ人なら分かると思います)
  • 最初から素材が提供されている場合がある
  • 人の作った作品をロードして、ツールの性能を測れるだけでなく、解析も可能
  • 大抵作品はツールのエンジンと別になっているためサイズが軽く、HPなどで発表しやすい
  • 特にAVG系ゲームは楽に作れる
  • 細かい修正は後にして、大まかな部分をさくっと作ることが出来る。実行して結果を見ながら作っていくことができる

プログラミング言語の短所
  • まずプログラミングできないと話にならない。それを覚えるために時間がかかる。両方を並行しながら行なうと、ゲームのシステムが大抵アンバランスになる
  • Windows(基本的には)の事をある程度知っておく必要がある
  • ファイル群をEXEパッケージできない場合、ファイルの暗号化ルーチンなどを施さないと、中身が丸見えになってしまう
  • そもそもゲームに合うよう作られていないので(HSP除く)、面倒な設定をしなくてはいけない
  • 規模に比例して変数管理に振りまわされる
  • 作業時間数が間違い無くかかるため、考案から完成までに時間がかかる
  • デバッグが大変



プログラミング言語の長所
  • 自分の思うようなシステム設計ができる。ジャンルの複合が可能
  • 大量のコンポーネントを活用すれば、作業工数を大幅に減らせる。意外に自分の技術を必要としないことも多い
  • Exe でそのまま実行できる事が多く、遊んでもらえる対象の幅は圧倒的に広い
  • 1からクリエイトする楽しさを味わえる
  • ゲーム全体のプロデュース(企画、構成)能力が身につく
  • 著作権関係で規制が少なく、まず好きな場で発表が出来る
  • 会社に持ち込む(投稿含む)と、評価されやすい。また、持ちこめる場所の幅も広い
  • さくっと小さいアイディア系ゲームを作るには向いている
  • 一回作ってしまえば再利用、システム改良が楽。ユーザの要望に反映できる

ツクール製品の短所
  • 会社のツクール製品の場合、投稿はその会社のみに限られる
  • 提供されているシステムはいくら不満があろうと原則的にいじれない
  • 同人で発表できない事がある(ツール製作元に許可申請をすればOKのケースはあります)
  • 販売の際は結局、最初から用意されている素材が使えないことも多い
  • 使いたくもないシステム・素材から強引に選ばされる。例としてフレームがチープ
  • 意外に面倒な単純作業を強いられる



望ましい選択
     それぞれの長所と短所を挙げてみました。この結果からどちらが優れていると言うことはできません。実際はケースByケースで、目的に応じてより良いほうを選択するべきでしょう。どうしても自分(たち)でプログラミングしたものをリリースしたいという考えがない限りは、柔軟に選ぶ事をおすすめします。鷹月も基本はプログラムですが、面倒な時はさくっとツクール系製品を使っています。
     また、上に少し書きましたが、プログラミング言語を使うと必ずしも難しくなるとは限りません。言語の中でも、ゲーム用にチューンされたコンポーネントを提供している所もあり、それを使うとツクール製品以上の開発スピードで公開する事も可能です。鷹月が以前発表したアクションゲーム「The Escape」等が良い例です。あれはTGWコンポーネントというものを使っていました。



選択のあとの、さらなる選択
     これまでに述べた部分から、恐らくどちらの種のツールを選ぶかの見通しは立てられることでしょう。しかしまだ続きがあります。ひとくちにツールと言っても、種類は沢山あります。製作者はそれらの存在と特性、機能を理解し、もっとも「自分の作りたいものが作れそうな」ツールを選ぶと良いでしょう。ここでは思いつくままにいくつか紹介しておきます。星の数は鷹月の独断と偏見で決定しています(5が最高、1が最低)。

    a) 機能性(性能的にどれだけ高いものが作れるか)
    b) 簡易性(作りやすい環境になっているか。素材が豊富か、など。)

  • ツクール製品・スクリプト製品群
ツール名種類機能性簡易性
Kilk & Play会社系、ACTゲームツール★★★★★
コミックメーカーフリー、AVGツール★★★★★★★
RPGツクール95会社系、RPGツール★★★★★★★
RPGメーカー会社系、RPGツール★★★★★★
Dante98:II会社系、RPGツール★★★★★★★★
CardWirthフリー、カードRPGツール★★★★★★★
SRCフリー、SRPG制作ツール★★★★★★
HNSフリー、VNスクリプトツール★★★★★★★
Orangeフリー、VNスクリプトツール★★★★★★
サウンドノベルツクール会社系、VN制作ツール★★★★★★★
2D格闘ツール会社系、格闘物制作ツール★★★★
SRPGツクール会社系、SRPGツール★★★★★

  • プログラミング言語系
ツール名種類機能性簡易性
Visual C++Normal★★★★★
Visual C++With MFC★★★★★
Visual BasicNormal★★★★★★
JavaFor www-browser★★★★
VBScriptFor www-browser★★★★
DelphiNormal★★★★★★★
DelphiWith TGW★★★★★★
DelphiWith Quadiple-D(DirectX)★★★★★★★
C++ BuilderNormal★★★★★★★
Hot Soup ProcessorNormal★★★★★★★★★
Hot Soup ProcessorWith DirectX/DLL★★★★★★★



 使用ツールを決めればいよいよ制作開始です。しかし実際はこれだけで制作はできず、いくつもの素材制作ツール(グラフィック、音楽など)を使う事になります。作品の評価の半分は「どのくらい素材制作ツールを使いこなせているか」に関わってきます。これらについても、そのうち紹介していこうと思います。

- 鷹月ぐみな 



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Written by. gumina(鷹月 ぐみな)