Article: AVGの型分類
     あまた存在するAVGは、それぞれいろんな進行パターンを持っています。巷を見てもそれらを分類しているところが見かけなかったので、鷹月が独断で分類を行なってみました。AVGを作ろうとする場合に、このページを見ておくと何かしら役に立つかもしれません。

Article Upload: 2000/4/6




基本進行系
     まず、AVGはその進行のパターンから3つに大別する事ができます。それぞれ私は1次元的、2次元的、3次元的と呼んでいます。

    ∇ 1次元的AVG

      直線的に話が進み、後ろに戻ったりする事はありえないものを指します。シナリオ製作に余計な手間はかかりませんが、プレイヤーが消化するスピードも極めて速いのが特徴です。

    ∇ 2次元的AVG
      ストーリーが舞台ベースで進み、いろんな場所を行ったり来たりしながら進めていくもの。しばしばフラグ立てと呼ばれる作業が発生するのはこのタイプです。

    ∇ 3次元的AVG
      2次元的AVGの拡張にあたります。フラグ以外に時間軸やパラメータといった概念を導入し、動的な進行分岐を与えるタイプのAVGを指します。3D風の絵があるないは全く関係ありません。

    ∇ 4次元的AVG
      3次元型のさらに拡張したもので、時間が戻ったり、視点をプレイヤーが切り替えながら進めていくタイプ。

     この概念を元に、それぞれを細分化してみました。以下、紹介していきましょう。

Type 1: ノンストップ型

     1次元的AVGの中でも、ほとんどスペースキーやマウスクリックの押下だけでゲームがプロローグからエピローグまで進んでいくもの。このタイプにおいても選択肢がたまに出ることもありますが、それはプレイヤーに擬似的に物語に参加させるための手段にしか過ぎず、別にストーリー分岐を起こすものではありません。俗に「オンライン小説」「電脳絵本」「電脳紙芝居」「デジタルコミック」とか呼ばれるものがこのタイプに該当します。
     「はっちゃけあやよさん」「シャルム」「ZENITH」「VIPER」などがここに属すると思います。この類にはゲーム性は皆無で、ストーリー性もしくはギャグ性(ノリ)に頼るのが通例です。小説・漫画・アニメを再現しようとすると大抵こうなります。
     ゲーム的には芸がないので、ストーリー直球勝負になります。


Type 2: ロープ型

     1次元的AVGです。ノンストップ型の派生にあたり、基本的には1本道なのですが、全く1本道じゃつまらんだろうと多少の分岐を加えたものです。選択肢によって一寸だけフラグが変化したり、フレーバー(展開に直接重要でない世界観情報)を得られたりするくらいで、あとはフラグによってゲームの最後、ごく少数ですがエンディングが分かれたりします。作り手の面から言うと接木的な理念が働いています。なおこのタイプには、誤った選択をするとゲームオーバーになる類のものが存在しています。
     「PRESENT」「PREMIUM」「LOOP:」など。オムニバスAVGのほとんどがここに属します。


Type 3: おだんご型

     1次元+2次元混合AVG。大まかな流れとしては間違いなく1本道なのですが、ある地域地域ごとに、複数の自由移動モードを許すフラグ立てAVGが発生します。自由移動と言っても、大抵は移動順が誘導されている事の方が多いのですが、ロープ型などに比べ、プレイヤーがかなり物語に参加している気分になり、かつ世界観のフレーバーを散りばめる事が可能になります。一連の自由移動の後にちょっとしたドラマイベントが発生する事が多く、それが終わるとまた自由移動と、文字通り「お団子型」に進行していきます。「ワイルドフォース」「ラジカルシークエンス」「JOKER」などがこれに属します。


Type 4: ザッピング型

     1次元+3次元混合AVGで、AVGの中ではやや特殊な部類に属します。基本は1本道なのですが、選択肢が色々と登場し、これらの殆んどが何らかの形でフラグやパラメータに影響を与えます。しばらくは普通に進むのですが、あるポイント(チェックポイントと私は呼んでいます)で、今までの行動が参照され、それによって分岐するなりENDを迎えるなりするものです。作り手はさして苦労せずにゲーム性を与える事ができるわけですが、プレイヤーにしてみれば最後の自動分岐のために同じストーリーを何度も何度も見るのは苦痛です。よって、メッセージスキップは必須機能となってきます。


Type 5: 多分木型

     後ろに戻る事はないために、扱い上は1次元的AVGに属します。選択肢がとにかく沢山登場してきて、その選択により次々ストーリーが変わっていくものを指します。ゲームオーバー以外のENDが大量に存在し、1回のプレイは短いのですが、何度も何度も違った選択をして楽しむことができます。
     このタイプは、一度分岐した後に同じルートに戻る可能性があるかないかでさらに分類できます。前者のパターンの方がゲーム的であり評価は高くなるのですが、ストーリーの整合性を考えて作る必要があり、一般に製作は難しいです。後者の場合は、ある程度の整合性無視が許され、中には「選択で世界観、キャラクターの性格や役割が豹変する」ものもあり、ゲームの統一性という意味ではバラバラになりがちですが製作はそこまで難しいものではないとされています。とはいえ、1本道に比べると面倒な事には変わりはないのですが……。
     前者のソフト例は「メッセンジャーフロムダークナイト」、後者の例は「雫」「TAXI幻夢譚」です。「雫」の誉めるべき所は、キャラの性格が変わらない所でしょうね、やっぱり。


Type 6: 錠前付きおだんご型

     1次元+2次元混合型。Type3のおだんご型の派生ですが、自由移動でフレーバーを与えつつドラマを挿入というのではなく、一つの関門(リドル)が与えられ、それを解くために場所移動を繰り返すというパターンを持ちます。関門を突破すると次の関門がまた立ちはだかる……ステージクリア型AVGという名前の方が分かりやすいでしょう。「調べる」コマンドで、画面をクリックさせるタイプのものの多くはこのタイプになります。「新・鬼ケ島」や「オーバーブラッド」、「デッドゾーン」がまさにこの例です。


Type 7: 区画内探索型

     2次元的AVG。舞台は基本的に1つないし少数の地域(町、洞窟、市など)で、プレイヤーは行動が認められている限り、自由な所に移動することが出来ます。基本的な進行は、いろいろ回っているうちにフラグが立ち、まだ別の場所で新しい展開が起こり……を繰り返します。探偵モノはほとんどこのタイプで、移動先の登場人物とはよく会うわけで、物語を進めていくにつれ、どんどん打ち解けていきます。(もしくは舞台の時間軸が進行する事により起こる諸々の出来事)で、ある日訪ねてみると死んでたり……というのは典型的なパターンですね。舞台が次々変わっていけば、おだんご型になるでしょう。
     なおこのタイプのAVGは、「ピボット」と呼ばれる、プレイヤーが何となく「ホッとするような場所」や、「フラグ立てに困ったときにとりあえず戻る場所」が出てくるケースが非常に多いです。それは事務所や自宅などで、電話が出来たり思考をまとめたりするコマンドが出てくる所です。(あなたがこのタイプを作ろうとするなら、ピボットは作るべきでしょう。プレイヤーが自分のペースでゲームができるかできなくなるか、かなり大きな差異が出てきます)
     「オホーツクに消ゆ」「DCコネクション」「ファミコン探偵倶楽部」などがこれに属します。


Type 8: 時間内探索型

     時間型の3次元的AVG。形態はType7に近いのですが、何がしか行動するたびに時間が経過し、ある一定時間が経過したときにその進行度合いによって分岐もしくは条件を満たさなかった場合のゲームオーバーが発生します。プレイヤーはその間に最も良さそうな行動を取らなくてはいけないので、ゲームにスリルが出てきます。但し、プレイヤーが製作側の意図通り動いてくれる保証はどこにもなく、バランス調整によっては難易度の極めて高い、ヒドいゲームになりえるので注意が必要です。なお「OK」が出た場合、また次の探索モードに入ることが多く、全体としてみると、どことなくおだんご型になります。「ブルーシカゴブルース」がこの良い例でしょうか。また、直接ゲームオーバーにはならないものの、悲惨な展開を生むのが「遺作」。あと、ゲームの一部にでしたが「TANIA」もこの概念を持っていました。


Type 9: マルチステータス型

     こちらも時間型の3次元的AVGです。ある一定期間、主人公は色々行動をします。それによって、キャラクターもしくはルートそれぞれに対するパラメータ値に変化が発生します。期間終了後に、複数のキャラクターもしくはルートの中で、最も条件を満たしていたものが選ばれ、そのエンディングへと続いていきます。恋愛AVGとか恋愛SLGとか呼ばれるものの大半がこれに属します。
     恋愛系ゲームの場合は、女性に出会うと、その女性に対して用意されたシナリオを順に進めていきます。時間軸に基づいていそうで、実はこれは独立している事の方が多いのです。作り手側にしてみると、「キャラが8人居たら8つのシナリオを作り、それを縦に飴のように裁断し、引っかかったものに対して次々食わせていき、全部食った所でゴールフラグ」といった感じでしょうか。シナリオさえ作ってしまえば後は実装するのは意外に楽だったりしますが、概してキャラクター間同士にまたがるイベントが作れず、「要するに小説が8本あるだけじゃん」とプレイヤーにそのうち看破されます。それを防ぐために「キャラ同士にまたがるイベント」というのを手作業で増やしているようなのですが、正直この制作方法はもう手詰まりの感があります。プロさんでもいまだにこの手法でゲーム性が出せると過信しすぎている感がありますが……。
     このゲームの例は、「同級生2」「卒業写真」「Piaキャロットへようこそ!」「ToHeart」「追憶」ですか。このタイプは本当はもっと細かく分類できますが、今回はここで止めておきましょう。



 以上、現在世に出ているAVGを9タイプに分類してみました。これで9割以上は網羅できているはずですが、YU−NO(4次元的AVG)を始めとした例外や要素複合型などがあり、決して全てではありません。それはそうと、ここで一つ重要なのは、これらの中で「どれが素晴らしい」とは一意には定義できない事です。それぞれに特質(得意な分野)があり、それを活かすことによって、初めて評価される作品が出来上がるのです。そういう特質を無視して、何となくボリュームが薄いから分岐つけてみようか、等といった考え方は、プレイヤーにあっさりと見破られるものです。この記事を参考にして、製作コンセプトを固めてもらいたいなーと思います。

- 鷹月ぐみな


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Written by. gumina(鷹月 ぐみな)