Article: AVGを作るにあたって
Article Written: 98/3/5 |
0:はじめに
いちおう自分としては、AVGの制作論を語れるだけの解析はしたかな、と思っています。そういう前提のもと、少しだけ安心して(?)、読み進めていってください。 |
1:主人公
この関係上、1人称小説のAVGへの移植は3人称に比べると楽のようです。視点がぱらぱら変わる3人称タイプは下手にAVGにすると、ただのデジコミとなるか(選択肢を少なくして消化した場合)、妖しいマルチサイトストーリーになってしまいます(選択肢を各キャラごとに用意した場合。普通ゲームとして失敗します)。 |
2:中継地
探偵モノだったら、自分の探偵所がそれにあたるでしょうか。 これを用意しないと、フラグ立てに詰まったプレイヤーが混乱してしまうようです。特に後半の移動個所が増えれば増えるほど、その度合いは強くなります。 その場所のみセーブ・ロードが許されていたり、もしくは、今やらなければならない事(指針)を示してくれたりする場所が中継点になることができます。「JOKER/バーディソフト」では、スペードクィーンの部屋がそこにあたるといっていいでしょう。 なお、シナリオの関係上、この中継地にイベントフラグを用意する人が多いようですが(家の周りに誰かいる/電話がかかってきた/突然の来客だ)、多用すると、逆に落ちつけない場所となってしまい、中継地になってくれなくなります。この点は気を付けましょう。 |
3:選択肢
選択肢には少なくとも4つのパターンがあるようです。それぞれを軽く紹介してみます。もちろん呼び名はありませんので、適当に命名させていただきました。 3-A、クリティカル選択肢
3-B、シチュエーション選択肢
3-C、ノベル選択肢
だったら最初から選択肢なんてなくても、と思うかもしれませんが、それをやると、「ただ見ているだけのデジコミ」になっちゃうんです。これのおかげで見せかけ上のインタラクティブ(相互干渉)性を実現しているわけです。 この手の場合、1つの選択肢に対して、2~4つほどのメッセージが用意されていて、それらをフラグで処理していきます。最後のメッセージは簡潔なものにしておく事によって、ユーザに「この選択肢は行き詰めたな」と判定してもらうことになります。 この最後のメッセージを長ったらしく、さらにスペース待ちを要求するものになっていると、「インターフェイスが悪い」「ユーザーフレンドリーじゃない」等とぶうぶう文句を言われることになります。 3-D、リレーショナル選択肢
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4:巡回
プレイヤーは巡回をする際、「聞く」コマンドあたりはよく使うのですが、あまりに面倒になってくると「見る」あたりはすっ飛ばしてしまう事が多いようです。 で、フラグを立てるためには実は「見るコマンド」が必要なときがあり、全然先へ進めずに困り果てる事があります(夢幻夜想曲・ドラキュラ伯爵、など)。困るというのは即ち、ゲームに倦怠感(=うざったさ)を与えることになります。 これを防ぎたい場合は、作り手側が「もう何もイベントの起きない場所」を移動可能地点から次々と削除していくといいようです。鷹月はこれを「自己消滅型選択肢」と呼んでいます。「サークルメイト/ボンびい」他で用いられています。 また、「見るコマンド」に重要なフラグを用意しない、という手法もありますが、下手をするとプレイヤーは会話文だけしか読まずに、世界描写部分を無視してしまうことになってしまうので、あまりおススメはしません。 |
5:舞台
5-A:現代
大概は恋愛モノ(憧憬)に入るか、非日常的ストーリー(ファンタジー観・古代・未来・超常系・旅・エッチもの)へもつれ込むようになっています。 これを逆に捉え、日常を描き出しAVGにした作品も多少ですがあります。同人での「もりな/ACTIVE GAMERS」がそうでしょうし、また恋愛モノでもあるんですが、「トゥハート/リーフ」はかなり日常生活部分の描写に凝っていました。 5-B:ファンタジー
ところでファンタジーで重要なのは、プレイヤーをその世界に引き込むことです。 つまり、「ああ。こういう世界があったらいいなぁ。多次元空間のどこかに存在していて欲しいなぁ」等と思わせることにあります(現実にある、と思うのではなく、願望として)。逆に「これは作り物の世界だ。人が考えた設定の中で、役割を与えられたキャラが踊っているだけだ」と思わせては絶対にいけない、ということですね。 その為に、世界観に魅力を与えていく作業が必要になるんですが、そのアプローチとして、「世界設定に凝り、演出する」方法と、「感情移入のできるキャラを登場させる」方法とがあります。 前者はともかく、後者は下手をすれば、ファンタジーそのものもどうでもよくなってしまうという、自己破壊的なものが含まれていますので、短絡的に「可愛い女の子を出せば、ファンタジーに引き込めるだろう」という考えは止めたほうがいいです。 とかいって、それでハマる人たちもいるようですが……。 5-C:近未来
これは割とAVGでは扱いやすいものと言われていますが、現代から未来に至るまでのプロセス・歴史をしっかりデザインする必要があり、実際はかなり大変です。 ただし、「未来に実際にこんな物語が起こるのかもなぁ」と、プレイヤーに想像させたとき、他のどのジャンルよりも感動(もしくは衝撃)を与えることができます。カクテルソフトの「コズミック・サイコ」「ナイキ」はやるべし、うん。 5-D:その他
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6:結末
小説を書くのに比べて、十何倍も大変な作業ですので、「考えながらおいおい結末も……」では、決して作品を作り上げることはできないでしょう。これは経験からよく分かっています。 結末が決まれば、ゲームがどれくらいの長さになるのかが決まり、またどれくらいのキャラが登場するのか、そして、制作にどれくらいの時間を必要とするかも見えてきます。 必ずしも逆順に作った方がいいとは言いませんが、見通しはキチンと立てておきましょう。AVGでは「次回に続く~」は、確実に続けるつもりがない限り、やってはいけないのです。前例によると「疲れたからここまで~」的に終わったAVGに、続きが出た試しはありません。 完結のないストーリーならまだともかく、途中でちぎれているストーリーは、物語とは言えず、はじめからないも同然です。せっかく作るのですから、最後まで作り上げましょう。 |
7:時間の経過
AVGではなるべく、時間が少しずつ経っている事を見せ、気付かせてあげてください。 セリフを微妙に、もしくは大幅に変えるもよしですが、展開として、今までいたキャラをいなくさせたり、新しいキャラを登場させたりすると効果があります。また、外部処理として、絵(背景の色とかも含めて)や音楽をチェンジさせることによって、時間の経過とともに新鮮感を与えることができます。 |
8:選択肢の水増し
1本道のラインを作ってから、その途中にいくつも選択肢をくっつけていく、という作業をしたほうが実際に楽になります。ただし、ここで1つだけ注意しなければいかない事があって、それは「あまり冗長な内容を書いてはならない」ということです。
勇気、友愛をテーマにして、正義一直線の主人公の物語があったとします。この主人公が、途中で、「助けてぇ~」と、近くにいるキャラクターに助けを呼ばれたとします(なんかベタな設定やな……)。
なんか難しく書いてしまったので、もう一度、分かりやすく説明します。 |
9:フレーバー挿入
ゲーム中のテキストの中で、どうでもいい事まで書かなければいけない、という事がよくあります。たとえば「見る」選択肢での「立て札」とか、本当にどうでもいい端役のセリフなど。これらを「フレーバーの挿入」と鷹月は呼んでいまして、AVGやRPGでは、意外にこれを埋めるのに時間がかかります。 フレーバーは、うまく世界観を広げるようなテキストを書くのがコツです。 立て札を見ると「その立て札はずいぶん昔のもののようで、文字がかすれている。なんとか、王都街道、と読む事ができた」とか、 人に聞くと、「北の山は、3年前に噴火したんです」など。 縦のストーリーに登場する事がなくても、こういう切れ端切れ端のテキストを繋げる事が、世界への魅力を増していく事になります。そして、ここの部分をないがしろにする人たちがかなり多いようです。 面倒のあまり、立て札を見ると、「マルチ萌え~、と書いてある」とか、人に聞くと、「中島みゆきの歌詞って、暗いと思いませんか?」などと、突如ファンタジー世界となんの関連もないテキストを登場させているのです。作り手にとってはただの「お遊び」だと思っていても、ユーザにとっては、世界観から「引く」要因になってしまいます(JOKERとかね)。 最初からパロディ・ギャグのAVGを目指す人は気にする必要はありませんけど。
面倒なものでも入れなければ作品にならないものがあって、それを自然に消化させるという作業がAVGでは必要なのです。これが小説や漫画などのノンストップ型ストーリーとの大きな違いであり、これをこなせるようにならないと、小説が書ける人でもAVGの脚本は作れないのです。 |
とりあえず、思いつくままに重要であろうという事だけを挙げてみました。ひょっとしたら書き忘れていた事があるかもしれませんが、それはまた別の機会にでも紹介しようと思います。記事への感想などお待ちしています。 - 鷹月ぐみな |