Article:回復魔法に異議あり


 RPGのシステムを考えていると、何の気なしに回復アイテム・回復呪文を用意するでしょう。しかしこの回復系は、RPGを極めてつまらないものにしている元凶だという事を知っているでしょうか。この存在のために、ゲームがパワープレイ偏重に陥ってしまっているのです。ここでは、それに関しての具体的な記事を書いてみました。

Article Written: 97/11/6




【ダメージの相違】
    【試行ルール1】
    主人公のHPを50、MPを30、攻撃力を10。
    相手の攻撃力を20とします。
    ここで、攻撃力はそのまま相手に与えるダメージを示し、MPは10使うことによって50ポイントのHPを回復させるものとします。攻撃にミスはないとします。
 この試行で、主人公→相手→主人公→相手、の順に攻撃を繰り返します。すると、主人公が倒れるまでに、最大で60ポイントのダメージを与えることができます。さて、レベルが1上がったとします。それにより試行ルールを変えてみます。
    【試行ルール2】
    主人公のHPを65、MPを40、攻撃力を15とします。
    相手の攻撃力、戦闘のルールは先ほどと同じです。
 と、この場合は、主人公が倒れるまでに、なんと150ポイントのダメージを与えることができます。ステータス変化は大差がないように見えますが、結果は大違いとなります。このように、回復をデフォルトで認めているゲームの場合は1レベル上がることにより、主人公の強さは格段に上がることになります。そして、製作者側もこのバランスに合わせるようにして敵のステータスを決める訳です(試行1の例では敵のHPを55、次の例では139としておくと、ぎりぎり倒せる……ということになります)。
 しかしこの方法では、極度のパワープレイ(レベルさえ上げれば楽に倒せる)を招く訳です。また、回復呪文の消費が意外に少ないため、「攻撃力増加」「守備力増強」「攻撃呪文」を使うよりも、回復&攻撃のほうがはるかにダメージが大きくなる、といった状態も招いてしまうのです。

 また、数値的な解釈に留まらず、この世界での治癒の経過も考えてみてください。いままで死にそうなぐらいの出血をしていたキャラが「やくそう」や「回復魔法」ごときで、いきなり五体満足に戻るものでしょうか?



【望ましい回復の形】

 以上の理由から、「回復魔法(道具)はみだりに用意しない方がいい」と考えています。対策としては、次のようなものが望ましいでしょう。

1、回復魔法は存在しない。代わりに戦闘終了後にHPは回復する。もちろん、「防護系呪文」はいろいろと用意しておく。
2、回復魔法の消費をめちゃくちゃキツくしておく。
 鷹月の作っている&作ろうとしているRPGもこの考えに基づいています。昔制作したRPG「エルナージュ」では、呪文の消費量を「防護魔法:2」「攻撃増強:2」「攻撃呪文:5」「最下級の回復魔法:10、しかも覚えるのは8レベルから」といった案配でした。戦闘は「スリリングに、勝つか負けるか?」あたりが望ましいのであって、ダラダラと続けるのは駄目なんですよ。その点において、「Only You」の戦闘システムのバランスは秀逸と思っています。また、スクゥエアなんかは「ハイポーション:99」なんて持てますよね。あれはメチャクチャだ、と思っています。


 ちょっと短めの記事ですが、こういう数値的なものも興味深いとは思います。ほんとうにあれだけのダメージ差が出るか疑う人は、ぜひ手で計算してみて下さい。

- 鷹月ぐみな


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Written by. gumina(鷹月 ぐみな)