「ユーザインタフェース」については皆さんご存知と思いますが、入力操作およびシステム自体が、よりユーザの立場に立って作られているか、そうした配慮を意味します。直感的、という言葉とは必ずしも等しくはありませんが、似たような意味合いを持ちます。
こうしたUIについては、製作者の皆さんはそれなりに整えてきます。商業系の作品は何よりこれが丁寧に作られています。まあ、丁寧という言葉の裏には金をかけて大勢の人にテストプレイをしてもらっているという背景が勿論あるわけですが。
ところで、影のUIなるものが存在することは、アマチュアの方はまず気づいていないことでしょう。気づいていないから影なんですが、これは主にゲーム進行におけるユーザへの配慮を意味します。ゲームを多くやりこんでいる製作者は、感覚的にこの存在を理解しているために、自然にこうした配慮を実装していたりするものですが、それでも気づかないものも多かったりします。商業作品はある程度はこうした影のUI、ある程度はしっかりしていますが、やっぱりプロの方でも気づかない方は大勢居る様で、そのままリリースしてしまっているようです。その結果、「なんだか理由は分からないんだけど、不快感があるんだよなあ」という印象に繋がるというわけです。
この影のUI、色んな例があるわけですが、そのいくつかを紹介していきましょうか。
[1] ACT:レベルアップするとHP、MPがMAXに回復する
現実的に考えるとおかしいシステムですね。これを実装する思惑はいくつかあるのでしょうけれど、レベルアップして回復してなかった場合、一旦基地(セーブおよび回復などが可能な所)とおぼしき場所に帰還してしまうプレイヤーの傾向を考えて、それを抑止しようとしている思惑も見て取れます。基地にちょくちょく帰られるとゲームのテンポが悪くなるという事を作り手は知っているからです。
[2] RPG:魔法ページのポインタを記録している
魔法使いが魔法を使う時、複数あるとページをまたぎます。それで、毎回4ページ目にある魔法を毎ターン選ぶ場合、3回ずつページチェンジをする……そんな面倒くさい事をプレイヤーが好むはずはありません。そういうわけで、魔法に関しては前に選択した呪文のあるページを保持しておくわけです。これも影UIの一つというべきでしょう。
[3] SLG:自キャラの下に隠れた地形も見える
こういうちょこっとした、スキマの配慮も影UIだと私は思っています。スキマの配慮といえば、FC時代の名前入力。4文字限界の時に3文字をいれようとします。間違えて4文字分入れてしまったとき修正するわけですが、バックすると文字が消えないままポインタが移動する。空白にする文字はない。あれ??と困ってリセットさせられる……こういうのもありましたね。
[4] ACT:ステージ内チュートリアル
ACTに限らずSLGでもRPGでも。アクションとか新しく覚えた技とか、初めてのプレイヤーはどうすればよいのか分からない。これを試行錯誤して覚えさせるとか細かい説明書で確認させるなどの手間を取らせず、ゲームストーリーの中で自然に覚えさせるようにデザインを行う(「迷牢」のチュートリアルステージもこの類)。
[5] RPG:町に入って直進すると宿屋に入るかその看板が見える
我々が町についた時、まず行うのは体力回復=宿屋直行、です。その場所はどこだと探し回ったという経験はありませんか?
ドラクエ4以降を再プレイしてみましょう。いかにこの考えを重視して、町の設計がなされていたかを見つけることができるでしょう。同人ではこの手の配慮が成されているRPGは希少のようです。
こうした影のUIの配慮をするためにはどうするか。「ユーザはこの場面でどういう事を考えるだろうか、何を求めているだろうか」といった、ユーザの無意識を想像するという作業が必要です。基本パターンなるものに慣れてしまうと、こうしたインタフェースをおそろかにしてしまいがちなもので、ぜひ留意して作品製作をしてみましょう。
∇ ひとくちめも
【1】「影のUI」これは別に業界で使われている用語ではありませんので気をつけてください。
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