第2夜:第1話について | |
長編ストーリーの第一話(もしくは出だし)は、それ全体においてかなり重要なウェイトをしめます。「そりゃそうだ」と思うかも知れませんが、そう思う人に第一話を書かせてみても、なかなか魅力あるものにならないものです。ここで必要なのは、いかに先を見据えた「起のストーリー」が作れるかどうかにかかっています。
ここでは、その特質をいくつか挙げてみました。Last Upload: 98/7/7
1、第一話は世界の規定良くも悪くも、世界観の半分は第一話で確定します。とりあえず第一話を書いて世界を拡げていこう、という思惑は実際はうまくいかず、逆に第一話に引きずられる形で世界が規定されていく事の方がしばしです。
2、感情移入のツボ
さて、そんな第一話ですけど、「ここでの設定はいくら突飛でも、それは世界観の一部として容認される」という重要な特質を持っています。
「GS美神」では、さっさと「幽霊というものが存在し、それに関わる仕事が存在している他は、全く普通の現代世界」というイメージを定着づけてますし、BELL-DAのゲームソフト「Snow Memory」では、第一話どころか最初の一文に「あるところに、腹違いの四人の姉妹がおりました」と、とんでもない設定を容認させていたりします。
この特質を利用して、オリジナリティーのある世界を作り出すわけです。逆に言えば、第二話以降に突飛な設定が突如として登場してきた場合は、「え~、なにそれぇ」と読み手には受け入れられなかったりする事があるわけです。この第一話で消化しなければいけない事はいくつもあるのですが、その中でも重要なのは「主人公、もしくはヒロインへ感情移入させること」です。だらだら話を進めていっても、そのうちに愛着を持ってくれるから大丈夫、なんていう考えは遅すぎて、先ほどと同じように二話以降になると、書き手の意図通りに感情移入してくれない事が多くなります。もちろんそれは、作品自体の失敗に繋がっています。
3、伏線キャラクター
以上のことから、第一話のストーリー、行動は少し規定することができます。あくまで一例ですけど、次のようなものがあります。・主人公のヒーロー性・正義性をなんとかして演出する(イベントを用意する)
・主人公が一つ何らかの「タスク」を果たす(つまり、1話ストーリーを完結させる)
・主人公(達)だけを、特殊環境へと連れて行く
・主人公に感情の起伏を与えさせる展開を与え、読み手にもまた刺激を与えるたとえば「ロードス島戦記」の一話では、「パーンは村の衆にゴブリン退治への蜂起を促しますが、首を縦に振らず、無謀にもエトと二人で怪物と戦いに突っ込みに行く……」というのがあり、これは正義性から感情移入をさせている例です。
また、厳密には第一話とは言いませんが、「幻影都市」では、家から出たところで謎の男達に襲われ、主人公の「天人」(と美紅)は楽に撃退します。これは「二人はこんなに強いんだ」というヒーロー性を与え、感情移入させているという例です。第一話の登場人物(ここでは、主人公たちメインキャラは除きます)は他に比べると愛着が強くなるものです。そのまま第一話のキャラが仲間になってしまうような例はともかくとして、その話以降出てこないキャラがいます。ところがしばらくして、やや特殊な働きをするキャラとして再登場させてみますと、「あぁ、あの時の!」と思い出すばかりか、不思議と感情移入までできてしまいます。第一話をもう一度読み返させるだけの魅力があれば完璧です。
・「シャドウスキル/岡田芽武」の呪符使いコア=イクス
:後に主人公達を脅かすレベルのキャラとして再登場します。・「ドラゴン騎士団/押上美猫」のリーナ
:ただの端役と思っていたら、後に最重要ヒロインとして大活躍します。このあたりがそういった「伏線キャラクター」の使い方の上手い例でしょうか。
また最たる例としては、カクテルソフトの「コズミック・サイコ」が挙がります。第一話で登場する予備校の同級生3人および教師が、「まさかこのキャラは関係ないだろう」と思わせておきながら、実は全員特殊人物だったりします。やりすぎのような気もしますが、理由付けがしっかりしていれば、これも伏線キャラクターとして立派に成立するものです。