第3夜:設定からの構築 | |
ストーリー構築へのアプローチは何通りもあるのですが、その中で「設定」そのものに着目して構築する手法があります。これについて軽く触れてみようと思います。Last Upload: 98/7/8
1、設定からの連想設定をもとにしてストーリーを考える場合、まずワンパターンではない、それでいて重要な設定を1つ2つ考えます。
2、ストーリーの流れを連想する1)基本的に住民全員は魔法が使える
たとえばこのような設定を思い付いたとします。そして、このセンテンスから、いろいろと連想させていきます。
連想1:では、一番魔法力のある人物が国王になるのだろうか。
連想2:魔法が使えない人間はいるか。また居たらどうなるのだろうか。
連想3:なぜ全員、魔法が使えるのだろうか。この連想の時点では深く突っ込みはしません。そして、一通り挙がったところで、これらについてのシューティング(消化)を行なっていきます。もちろんそれらも連想の一つです。
消化1:魔法力があるというのは舜帝のように人物として優れているというわけではないし、前の国王もやすやすと明け渡したりはしない可能性が強い。もっとも、王家はえてして魔法力が強いほうが格好いいわけだし、歴史を溯るとおそらく、最高の魔導師が初代の王になった可能性は強い。よって、血筋による魔法力の継承という設定を考えて、「そもそも王家の血筋はみな魔力が高い」にしておけば、問題は解決すると思われる。
別にどう結論づけてもいいですし、あとで変えても構いません。とりあえず、「でたとこプリンセス」的な設定ができあがってますが……(^^;;
消化2:変化をつけるという意味で魔法が使えない人間というのは面白い。しかし、少数である上に、「魔法の使えない人間と結婚すると、子供も魔力がない可能性が強い」と言う噂から(真偽のほどはともかくも)、差別され、虐げられる可能性(あくまで可能性)も高い。しかし、これは魔法を使えない人間が一定の割合で居る、と言うことを証明もしてしまう。
とまぁ、ソードワールドの古代王国のパターンになってしまうことに気付き、これはこれで一つの連想として保留しておいて、別に分岐も考えます。
消化2-2:少数どころか、世界全体でごくごく二人ぐらいにしてはどうだろう。噂どころか、呪われた子供として忌み嫌われるに違いない。さらに「魔力持たぬ者が大人となったとき、世に災いふりかからん」などと言ったいかにもな予言を設定しておくと、このキャラは世界を全体に敵に回すことになる。
もっとも、これはこれでT・ヒックマン&M・ワイスの「ダークソード」と同じになってしまうので、保留しておきます。
消化3:魔法というものが世界の方程式的なものに組み込まれているとか、マナが大気に漂っているからとかいう理由が欲しい。後者の場合は、そのマナを空間から消し去る術があったとしたら、彼らは魔法を使えなくなる訳で、なんらかの伏線に使えるかも知れない。また、前者でない場合、魔法を使えるのはその地域の住民だけなのか、世界一円すべての人間なのかの決定もしておきたい。地域住民だけだと、外部との何らかのコンフリクトを起こせる可能性が高くストーリー展開がしやすくなる。
……とまぁ、最初の設定「基本的に住民全員は魔法が使える」が、ここまで膨れ上がると、充分ストーリーラインが見えてくる気はしないでしょうか?
何となく外周部の設定ができてきたような気がしたら、次は大まかにストーリーを考えます。ここで湯水のように物語を作り上げられる人ならまったく問題はないのですが、そう簡単にいくはずはないので、とにかく起承転結だけを考えます。先ほどの連想も含めるなら、各展開は次のような目標(規定)に従うことになります。
・起:設定の紹介およびそれに魅力を与える作業を行なう。
・承:主人公の特性を活かして、ストーリーをぽんぽん、と進めていく。
・転:やはり主人公もしくはヒロインに危機をあたえるべきです。
・結:オチ。これを決めずに物語を書いていくのは愚かです。これに従って、先の設定をストーリーへと拡大していきます。
【起】魔法力を持たない主人公は、《欠損者》として蔑まれ、利用されながら育ってきました。しかし彼はその環境を恨むことなく、都市のために尽くしていました。その結果、彼は異端ながらも領主に気に入られました。
【承】ほぼ全員が魔法使いというこの街の人間の力を怖れて、隣国からよく怪物が送り込まれます。その度、主人公やその友人達はそれらを退治しにいきます。
【転】大軍が襲ってきました。敵の中には内通者も居たらしく、町の人たちは次々と殺されていきます。剣の力も敵いません。絶体絶命の危機です。ここで主人公は「戒め」を解きます。彼はある過去から、みずから魔法の力を封じていたのです。
【結】主人公の力で大軍を撃退しましたが、彼もまた致命傷を負ってしまいました。しかし、彼に惚れていた少女がそれを救いました。主人公はそして、ペンダントをある墓に埋めます。街を救ったのが彼であることは知られなかったので、彼は再び力を封じて、元の生活に戻っていきました。……とまぁ、あくまでプロット段階なので細かい所は詰めていませんが、これを元に脚本を完成させていくというわけです。