第5夜:タイトルからの物語構築 | |
名作に名タイトルあり。
これはゲーム界というよりは創作系一般で認知されている言葉です。では、それを裏返した後ちょっと変形して、「含み(趣)のあるタイトルを考えれば、それから良いストーリーが類推できるのでは」という逆問題に発展させてみます。実際はそう上手くはいかないものですが(^^;)、タイトルからストーリーを構築する手法はそれなりに効果的で、かつ、良いタイトルからはストーリーが浮かび上がってきやすいものです。
ここでは、そんな実例を紹介しています。Last Upload: 99/3/4
・韋駄天方式でタイトルを並べていく韋駄天方式とは、「とにかく単語を思い付くままに」という意味です。元ネタを知っている人は……通か、もしくはファミリーソフトの回し者です(^^;)。それはともかく、仕掛けは単純で「含みのありそうな」タイトルをとにかく5つも6つも考え、それを紙に書きつけておきます。その後、単語からストーリーを類推させていくわけです。
また、これらのタイトルは1つだけだとイメージが弱いので、2つを組み合わせて考えてみるのも手です。どちらか一つをメインタイトルに、もう一つをストーリーのスパイス程度にしてみると、それだけで一本の物語(小説/ゲームの脚本/TRPGシナリオ)は出来上がってしまうのです。これは三題話的な構築手法とほぼ同じですね。
では、まずダメな例からあげてみます。・ゲルトハルト戦記
ゲルトハルトは適当な造語です。いかにも格好良さそうに聞こえますが、「~戦記」と付いた時点でストーリーが長いものになります。小説や脚本を書ききった経験のない人にははっきり言って消化できるタイトルじゃありません。却下。
ちなみに語尾の「戦記」、この仲間として「伝説」「伝記」「伝奇」「国記」「創世記」等があります。初心者はこれらを使わず、「~物語」程度にしておいたほうが無難です(^^;
..と書いたところ、鷹月の発表したSLG「ラープルール戦記」のネーミングに関して指摘されました。あれはストーリー系のゲームではないため、大胆なネームが許されるというわけです。いちおう補足。・十六将軍物語
ストーリー中で16人も将軍を出さなければいけません。上手くキャラクターを活かしきれば良いのですが、それよりも「16人出さなくちゃこのストーリー完結しないんだよなぁ」という嫌ったさが勝るので、こういうネーミングは止めましょう。「4度目の挑戦」なども同様。・魔界の皇子
タイトルはストーリーを作る為だけでなく、本来の目的である「人を惹きつける」という効果もなくてはいけません。その点で、「このパターン飽きた~」と思わせるものはダメということです。「暗黒の剣」「破滅の魔法」「ドラゴンソード」なども同様。・最後の洞窟
タイトルに舞台を表わす言葉を入れたときは、「その場所でクライマックスがあるんだな」とか推定できます。で、洞窟というありきたりな場所だった場合はイメージも湧きませんし、惹かれません。やるのでしたら「最後の時計塔」などにしておきましょう。・ドワーフ大逆転
面白めなストーリーが好きな人はいいのですが、この瞬間プレイしたくなくなる人もいるでしょう。「三味線ストライク」とかも同様。・しろたへのとき
イメージはいいですし、タイトルらしいです。ただ、言葉が抽象的すぎる上、「しろたへ、って何だ?」と考えると全然イメージが湧かなくなります。この手のは類推させるには向きません。「うつりゆく幻」「きらきら」なども同様です。もちろん、絶対に駄目とは言いませんが、単純に難しいということなんです。ある意図を持ってそうつける場合は一向に構わないと思います。さて、今度は実際に使えそうなタイトルを挙げ、軽く類推してみます。思索の特訓ということで、これらのタイトルから鷹月の類推とは違った類推をしてみるのもいいかと思います。
・光の墓場
タイトルを挙げていくのに慣れていないときは、とりあえず「~の~」というパターンを考えると良いです。で、なるたけ「おや?」と思わせるようにします。「闇の墓場」だとベタベタですが、敢えて「光」を埋めてみました。
墓から光が漏れる。神秘的というよりは、逆に不気味である。それはともかく、何が起きているのだろうか。空から見ると文字になっているのか。
それとも、「光」を吸い込んでしまうモノがあり、それを「墓場」と呼んでいるのか。
もしくは、歴代の勇者を葬った墓地がそう呼ばれているのか……。
……とまぁ、これくらい考えることができるタイトルは、何らかに使えるものと判定してオーケーです。・赤き砦
砦は普通石で作ります。でも「赤」というのはなぜだろう。ここで「血の砦」とすると人が沢山死ぬというパターンが読めてしまうので敢えてそうしません。物語の最後で、夕日に照らされて赤く染まったというパターンもあります。何かのアイデアで、途中で砦を赤く塗りつぶす事になるのかも知れません。それともやっぱり、砦が炎に包まれたというネタかも知れませんし……。・悪魔の石
剣はベタベタですが、「石」とか「笛」とか、アイテムを変えてみると印象は変わります。剣は騎士や戦士しか持とうとは思いませんが、綺麗な石……宝石など……だったら庶民だって手に入れようとします。
さてどんな効果のある石なんでしょうか。魂を削る代わりに魔力に変える石、一匹の悪魔を使役できるようになる石……などなど。で、最後はこの石を割ってオシマイというパターンがいいですねー。・秩序の本
同じアイテムネタで攻めてみます。国の宝であり、これに反する行いをすると、本の魔力が違反者を罰したりすることができるのかもしれません。これに「法」を書き加える魔法のペンを誰かが作り、国を支配しようとする人間が出てきたりします。となるとその人間をなんとか倒すシナリオになります。
・神の樹の子供たち
神の樹といえばバンヤン(世界樹)。その根元に住んでいる子供たちの物語でしょうか。それとも、神の樹に宿る精霊達のことでしょうか。いずれにしても、「神の樹」が重要な意味合いを持ち、ストーリーそのものに関わってきます。子供が神の樹の地を征服しようとする兵士たちと闘う話になるかもしれません。精霊と子供のふれあいを描いたほのぼの物語になるかもしれません。……ってな感じです。後は、タイトルだけ並べておきますので、いろいろ考えてみて下さい。
・ただいま王様募集中
・月の天使たち
・仮面の聖騎士
・復讐の杖
・流砂
・風の谷からの贈りもの
・ラークボルト
・尖塔都市
・絶望は21時からやってくる
・瞳に嘘と真実を
いろいろなアプローチでストーリーを作ることができるわけですが、ぜひこの手法も試してみてください。