電脳組曲/世界観解説
電脳組曲/世界観解説
最終更新日: 2006/02/07 01:54:25
以下は、1997年にサイトに発表した、エテルナの世界観についての公式ドキュメントです。電脳組曲の世界は、他のどの世界観(ソードワールド、ルナル、シャドウラン、ルーンクエスト)よりも広大です。この世界ではある意味どんな世界をも含有しえるからです。これから、この電脳組曲の世界観を説明していきます。順番に読んでいってください。























1.実世界
ある世界がありました。これは、今私たちが住んでいる世界とほとんど同じ気候・文化を持った世界です。ただちょっと、文明は発達しています。もしかしたら私たちの世界の近未来なのかも知れません。この世界を《実世界》と呼ばせていただきます。2.もう一つの世界の発見
実世界のそんなある日、一つの大発見がありました。数人の科学者が「不思議な空間」を発見したというのです。元からその空間はあったのだそうですが、私たちには見る事ができなかったのです。言ってみれば、普段我々が見ている空間に紫外線や電波が飛んでいますが、それを見れないのと同じなのだそうです。さてその空間ですが、それ全体が巨大な「立体的な記憶素子」であるがごとく、特殊な磁波を流す事によって、その空間に情報を書き込む事ができ、それを保存することができたのです。
さらにこの空間には「不確定情報」も記憶できる特質がありました。絶えず形を変化させる光の波長……や、人間から放出される精神の波長など……がこの「不確定情報」にあたります。さらに、風や水の流れ、木の成長していく様なども情報として記憶できるのです。
この不思議な世界の事を一時的に《磁界空間》と呼ばせていただきます。発見者の一人がそう名づけたのですが、後に改名されるので一時的なのです。
3.磁界空間の使い方
古代神話において、「神が世界を作り出した後、天界に住んでいた自分の使徒である人間を、その地上に住まわせた」という伝えがあります。この磁界空間はまさにこれと同じ事が可能になるのです。ある人間が神となって、世界を構築し、そこに人間を住まわせる事ができるのです。
もちろん、《実世界》に住んでいる人間がそのままの実体で、磁界空間に行く事はできません。しかし、その人間の全ての精神波長の1周期をコピーしてしまい、また、磁界空間の方に、論理的な情報で「肉体」を作り上げ、それと融合させてしまう事によって、人間が磁界空間に「存在する」ことができるようになるのです。後でまた説明することになりますが、この過程を《電脳化》と呼びます。
4.エテルナシステムの完成
とまあ、こういった荒唐無稽な計画を考案した人物がいました。グリーシェルと名乗る天才科学者は、そしてそれを僅か3年で実現させてしまいました。この時彼は、この磁界空間を《エテルナ》と名づけました。「夢幻なる空間の、無限の広さを持つ世界。……私は人々を、永遠の楽園に導く事を約束しよう……」
彼はこう言ったと伝えられています。
5.創造
このエテルナの世界の広さは不明でした。宇宙より広くはないだろうと推測することぐらいしかできませんでした。さて、この世界に情報を書き込むのには特殊なコンピューターを用いました。そして、コンピューターに命令をすることで、エテルナの全てを構築していくのです。
「配置せよ>この位置に>木を」
「配置せよ>この位置から>この位置まで>川を」
「配置せよ>この位置に>太陽を」
「設定せよ>太陽>変化せよ>強さを>光>周期は1日」
「生み出せ>鳥を>この位置に」
このような案配で世界を構築していきます。この作業のことを《論理創造》と呼びます。それに対して、電脳化してエテルナに行った人間が、その世界で物理的に作業をして、木を切って家を作ったりする行為を《物理創造》と呼びます。
定義がやっかいですが、頻繁に登場する言葉ばかりなので、よく覚えておいてください。
6.電脳化
先ほど触れた電脳化という過程について詳しく触れておきます。まず、実世界に住む人間が、ある機械の中に入ります。そして、その機械は人間の精神波長(脳のすべての情報を波長にしたものだと納得してください)を取り出し、エテルナで存在できるような情報の形に変換します。この変換後の情報を《精神体》と呼びます。この作業はいわゆる精神のクローンを作り出しているわけです。
さて、その際にエテルナに保存しておいた擬似的な肉体(むろん、情報によって構成されたものです)を用意し、先の精神体と結合します。こうして、その人間はエテルナの中に「存在」することができるというわけです。ちなみに、エテルナにて、疑似体と精神体を結合して存在するものの事を《電脳体》と呼び、その人間も電脳体》となります。
ちなみに電脳体は、実世界の人間とほぼ同一の感覚を持ちます。触覚、嗅覚、視覚などなど。また、電脳体も食べなければやせてしまいます。完全に構成は人間と同じだと思ってください。ただ、痛みの感覚は実世界の55%にしてあるようです。
7.電脳化後の人間
問題はこの後です。実世界の人間はここで機械から出ても、機械の中に居ても構いません。但し、その扱いはまったく変わってきます。前者の場合、元の人間は何事も無かったかのように実世界で生活することができます。但しこの場合、この人間はエテルナでの「自分の感覚」は分かりません。そしてある時間が経過した後、再びこの人間は機械に入ります。この際に、「エテルナでの自分の記憶」を実世界の人間の頭にダンプされるのです。「私はエテルナで~~をやったんだな」というふうに、経験として記憶されるのです。
一方後者の場合、その人間は実世界では何もすることができません。その代わり、リアルタイムで「エテルナでの自分の感覚」を共有することができるわけです。
この後者の方はネットものでおなじみですが(クリスクロスなど)、前者のシステムが、この電脳組曲のウリでもあります。
8.クローンの補足
実世界の精神と、エテルナでの精神体。エテルナにいる方はいわゆる「クローン」ですが、情報としてはまったく同一のものです。そのため、意識にイニシアティブというものは存在しません。どちらも「本当の自分の精神」となります。この補足の意味は、後の項で分かると思います。
9.エテルナからの送還および死亡
電脳体となった人間は、エテルナの世界で生きる事ができますが、エテルナから存在を消すこともできます。エテルナにある「リンクゲート」と呼ばれる所に行くと、そこで全ての情報を実世界の方に移動する事ができます。第7項にて前者を選んだ場合、機械を管理している会社から人間に「エテルナのあなたは送還されました」と連絡がいきます。そしてその人間が機械で情報を得れば、何事もなかったかのようにエテルナでの自分の存在は抹消される訳です。また、エテルナでも死亡することがありえます。殺されたり、毒ガスで死んだり……まあ、実世界であるような死に方によって死ぬわけです。
死んでしまった場合、強制的にその時点のすべての情報が、実世界に送還されます。以後の扱いは先の「送還」と同じです。但し、感覚を共有するため、「死」の感覚および痛みが実世界の人間にも伝えられますので、耐える事はできますが、ある程度のショックを受ける事になります。
但し、エテルナにて「精神もしくは疑似体にものすごいショックを受けて死んだ」場合、この状態の情報を伝えると、実世界の人間が発狂しかねないために、クローンの精神体ごと消滅させるようになっています。
それはともかく、エテルナでの「死亡」は実際の死とはみなされないのです。つまり、人間は「不死」を得たのです!
10.初期エテルナの歴史
こういうシステムを持ってできあがったエテルナは、まずはスポンサーの要望通り、バーチャルリアリティーゲームの舞台として、その空間のほんの一部をそれに当て、世界を構築していきました。数十倍の倍率で当選した人たちは電脳体となり、この世界で今迄に無かった爽快感を楽しんだようです。こういった催しが数回に渡って行なわれ、いずれも大成功を収めることができました。11.規則のローカルとグローバル
エテルナは巨大な空間です。あまりに巨大なので、構築する際はそのごく一部を使い、そこに《世界》を作り上げるのです。その際、重力はどうだ、引力はどうだといったルールも自由に設定ができます。全ては論理創造をする人間に任されているわけです。「この世界では魔法が使えるようにしよう」や、「この世界の電脳体は、跳躍力を2倍にしてやろう」などといった事もできるのです。変更できないのはエテルナシステムの根本となっている概念だけで、それ以外はローカルルールとして設計ができます。ある世界において有効だった設定は、となりの世界にいったら無効になり、別な設定が有効になる、という仕組みです。つまり、エテルナという巨大な空間の中に、全く違うルールを持った世界がいくつもいくつも存在できる、というわけです。ようやく前フリの説明ができました。やろうと思えばですが、エテルナの中に「ソードワールドの世界」や、「ルナルの世界」、「ワースブレイドの世界」、「ドラゴンクエストの世界」、「ダンシィング・ウィズ・デビルズの世界」などを作り上げ、存在させる事ができるのです(もちろん、あくまで可能性としての仮定です。エテルナにソードワールドがあると言っているわけではありませんので念のため)。定義で言うなら「メタ世界」という所になるでしょうか。
12.遊戯世界と住居世界
バーチャルリアリティーで成功を収めたエテルナでは、続いてグリーシェルの構想通り、人間が住むための世界を作る事になりました。当時、実世界はスモッグ汚染や戦争などで、大量の人々が苦しんでいたので、その人たちに平和な世界に住ませてあげたい、とグリーシェルは言ったそうです。こうして出来上がったのがいくつもの「住居世界(アズランド)」です。メタリックな都市、中世の街、大草原の小さな家……のようなのどかな丘陵地などなど、好きな世界を享受できるようにしました。これらに対して、バーチャルリアリティーなどの世界を「遊戯世界(フェルランド、あるいはプレフェリア)」と定義しました。
こうして、電脳化した人々はまずアズランドに住み、何か強い娯楽が欲しくなったらフェルランドに行く……という、電脳楽園の形が確立していったのです。
13.エテルナの制御について
エテルナの名目上のトップは、実世界の某大統領となっていましたが、実質的な権力を握っていたのは、グリーシェルでした。この世界はおろか、実世界ですらも彼に逆らえる者は存在しなくなっていきました。それはもちろん、実世界からエテルナに電脳化する人がどんどん増えてきたためです(ちなみに第7項で、前者を選ぶ人の方が多いです。これは電脳化という名前の他に、《登録》とも呼んでいます)。さて、このエテルナシステムは、グリーシェル以下、48人のメインオペレータと呼ばれる者たちが制御しています。メインオペレータのうち24人は実世界にて論理創造などを担当し、残り24人はエテルナにてメンテナンスを担当しています。彼らの暮らす場所は、どちらの世界においても秘密にされています。また、メインオペレータの下には様々な一般オペレータと呼ばれる人たちがいるのですが、これに関する説明は「エテルナの住人たち」の章に譲らせていただきます。
14.エテルナの繁栄
こうしてエテルナに登録をする人は膨れ上がり、エテルナシステムを実現してから僅か80年で、実世界の人口120億のうち約半数の60億人が登録をすませました。すでにエテルナは生活・経済の全てにおいてなくてはならないものになっていました。「グリーシェルの楽園構想」は、ほぼ達成されたようでした。彼は103歳で天寿を全うし、この時には孫であるギルガメウスがエテルナの頂点に立っていました。15.≪消失≫
そんなある日、とんでもない事件が起きました。ある時を境に、エテルナに来るはずの精神体が来なくなったのです。そして、実世界からの通信が途絶えました。エテルナのオペレータは、はじめは通信の異常だと思っていました。ところが、通信や機械に異常はありませんでした。
数日後、ギルガメウスは「現実世界は消失した」と発表しました。これを境に、グリーシェルの楽園構想はぐらりと変わっていきました。
16.消失の意味
エテルナに住む人たちは、「消失」がどんなものか分かりませんでした。同じ時間にエテルナ全土に起きた地震はさほどの被害もなく、割と平静としていたのです。しかしほどなく、これが何を意味するかに気づきました。実世界がなくなったのです!
120憶を養い、エテルナに住む人たちの真の精神と肉体の存在する実世界がなくなったのです!
そして、その影響を少しずつ理解していくにつれ、エテルナは大パニックと化していきました……。
17-1. 断絶された家族
まず、実世界では同じ家に暮らしていた家族ですが、エテルナにおいても同じとは限りませんでした。家族に限らず、実世界での恋人たちも、エテルナにおいて引き裂かれました。エテルナに電脳化をしていなかった人々とは、……考えるまでもなく、二度と会う事はなくなりました。
17-2.失われた論理創造
実世界が消失して、エテルナが全く無事だったかというと決してそうでもありません。実世界でのみ操作できた、コンピューターによる論理創造が不可能になったのです。以後、エテルナにおいて何かを作り出すのは、物理創造に限られてしまうことになりました。17-3.断絶された世界
実世界でエテルナを制御していたものがありました。それは大部分の「ゲート間の移送処理」でした。ゲートとは世界と世界をつなぐものの事です。これまでは基本的に開放され、自由に世界間を行き来できたのですが、このほとんど(実世界で制御していた部分。全体の70%)が断絶されました。17-1で断絶された家族や恋人のほとんどはこの瞬間、エテルナで会う事はできなくなったのです。17-4.ひずみの登場
現実世界の余波の影響により、「ひずみ」と呼ばれるものがエテルナに多数生まれました。これは自然被害の形を取ったり、怪物の形を取り人々を襲ったり、ウィルスとなって精神体を汚染し、壊れた人間を作り出したりしていったのです。17-5.死亡処理
色々とパニックにさせる要因がありましたが、何より「エテルナでの死亡」に関する影響を人々は知り、全世界が大混乱に陥りました。「混沌の218日」と呼ばれる出来事がそれです。先の定義によると、エテルナで死亡した場合、その情報が実世界へと送られます。しかし実世界は消失してしまいました。すなわち情報は行き場をなくし消滅します。……つまり、実世界で言うところの「死」と同等のものがやってきたのです。不死を約束されていた世界において、死の恐怖が返ってきたのです。パニックは当然の事でした。
なにより、遊戯世界(フェルランド)に閉じ込められた人たちが一番の被害者でした。 「死んでも大丈夫」という原則にのっとって作られた世界に閉じ込められたのです。いくつもの遊戯世界は修羅界と化したと伝えられています。また、全滅した世界もあるそうです。この人たちは、「消失」が、たとえば核爆発で文字どおり何も無くなったというのではなく、実世界の位置が相対的にずれただけとかの理由でそうなっただけであって、ちゃんと実世界に肉体を持って戻れるんだという事を期待しながら……死んでいきました。
18.死に関する補足
先の補足で「二つの精神は同一のもの」と書きました。「消失」によって、実世界の人間が死んだとは書かれていませんが、仮に本当に死んだとした場合、彼らの精神のイニシアティブ(説明しにくいのですが、考える存在そのもの)は消えてしまうのではなく、コピーの方に移るものと思われます。つまり、第7項で前者(登録)を選んだ人たち(経験でしかエテルナでの出来事を知りえない人)は、その瞬間から、自分の意識がそのままエテルナでの意識にシフトされるということです。だからどうと言う事ではありませんが、一応そう定義させていただきます。19.そしてエテルナは…
実世界の人々の楽園として用意された、第2の世界。しかし消失により、人間はエテルナ……人間が作った仮想空間……を唯一の世界として生きていかねばならなくなったのです。グリーシェルの構想は消失後は大きく変わってしまいましたが、仮に「消失」が現実世界の崩壊だとしたら、グリーシェルは60億の人間を救ったという事になります。電脳化というノアの箱船に乗って、人類は新たなる世界で生きる事になったのです……。以上が、「電脳組曲」の世界観および、この世界の物語の大前提となるエピソードです。
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