Article:ポンティ分類法(+α)によるシナリオ構築 ポンティというフランス人が、ストーリーの根幹をなすパターンを36に分類したものを「シチュエーション36の分類」として著しています。これは劇作家のために作られたのですが、桐生茂氏の「シナリオメイキングガイド/新紀元社」や、野田高梧氏の「シナリオ構築論/宝文社」でも引用されているように、一般のストーリーにも充分に通用する分類法です。 AVGやRPGは基本的にドラマチックな展開を持つため、鷹月はこれを引用して、ゲームシナリオという面から再構成し直してみました。
Article Written: 98/3/19 |
【分類一覧】
01、哀願・嘆願
37、破滅を刻む時間
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1、哀願・嘆願
適当な依頼だとプレイヤーが興味を持ってはくれないのですが、この手の哀願は、プレイヤーが同情もしくは感情移入して、ゲームへの興味を強く持たせるという効果があります。 パターンとしては、「街の少女を主人公に接触させる」→「ここでその少女に好印象を持ってもらえるように仕向ける(笑)」→「その少女が高熱にうなされる」→「親の嘆願により、病気を治す薬を探しに行く」というものですね。ただし、この「同情・感情移入」を与えなかった場合は、ただの強制導入として、逆につまらなくさせてしまうことがあります。 この手の導入が使われているゲームは色々ありますが、総じて主人公がある種の独特な職業に就いている場合が多いですね。弱めな所としては、「わくわく麻雀パニック式神伝承/フォアナイン」もこれに入れていいかもしれません。 |
2、救助・救済
「幻影都市/マイクロキャビン」の導入がこのパターンですね。ある姉妹が逃亡、姉は捕まって妹だけ逃げてきた……という導入なんですが、1の「哀願」も含んでいるので、非常に理想的といえます。 |
3、復讐
「デッドフォース/風雅システム」などが割と、復讐が行動理念になっていると思われます。「主人公は一国の王子だった」→「侵攻に遭い、両親は殺され、国は滅ぼされ、主人公は監獄にぶちこまれる」→「脱走、そして志願を募り、旗揚げする」ですね。 |
4、近親者同士の復讐
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5、追走と追跡
また、主人公側が企業・組織から重要なものを奪って、逃走する場合には「追跡される」側となります。 「PHOBOS/姫屋ソフト」の中盤や、「FF7/スクウェア」のチェイスシーンなどがそうですね。 |
6、苦難・災難
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7、残酷な不幸の渦に巻き込まれる
「デッドフォース」や、「ヴェインドリーム/グローディア」の導入はもちろんこれですね。残酷であればあるほど、展開は壮大になっていきますが、やりすぎるとプレイヤーがその作品から「引いて」しまうので、気を付けたほうがいいようです。 |
8、反抗・謀反
また、なにも悪からの脱却を図って起こすとも限りません。「陰謀」「計略」の類のように、善良なキャラ、もしくは組織を陥れようとするものもあります。 「英雄伝説/日本ファルコム」が「謀反で陥れられる」→「反抗」、「英雄伝説2/日本ファルコム」が「支配される」→「レジスタンスに参加して反抗する」という、この典型的なパターンにより展開していました。 「裏切り」に関しては、二重スパイにしたりと、これまた色々な発展ができます。 |
9、戦い
これに関しては下手な説明はいらないでしょう(ゲームの紹介も含めて)。ただ、最初が劣勢であればあるほど、それをひっくり返していくということで、劇的なシチュエーションが生まれていきます。 なお、ただ戦うことが目的なのではなく、何か別な目的のために戦うわけで、プレイヤーに戦うことへの正当性を与えてあげる必要があります。 |
10、誘拐
ゲームでは、「RE-NO/ぱせり」から、「悪夢/スタジオメビウス」まで、いろいろあります。ストーリーの「転」としてはもってこいですね。 |
11、不審な人物、あるいは謎
言うまでもありませんが、謎を残したままゲームを終わらせるというのは、それに納得しない限りユーザは消化不良を起こしますので、ちゃんと解決させてあげましょう。続編を作るなら「引き」という形で残してもいいんですが、設定逃げはきびしく批判されるのがオチです。 |
12、目標への努力
こういった小目的を少しずつ突破していくことで、ゲームを壮大にすることができるというわけです。 |
13、近親者間の憎悪
「間違いで恨まれていた」や、「憎悪する理由がなくなった」という消失系で解決させると楽といえば楽です。「痕/リーフ」の耕一が父に抱いていた恨み、がいい例ですね。うまくいけば、キャラクターの成長へと繋げることもできます。 |
14、近親者間の争い
血みどろの争いになってきますと、一方が死亡するまで続けられる事になってしまいますが、お互いの敵にあたる第3者を登場させ、「実は仕組まれていた」や、「もっと恨むべき対象が発生した」ということで、解決させてしまう方法もあります。 |
15、姦通から生じた惨劇
「領土を奪われたから殺す」では納得のいかないプレイヤーも、「犯されたから殺す」とされてしまうと、納得させられてしまうのが「まいった」所ですね。但し作り手側は、注意してストーリーを構築しなければいけません。 これをストーリー全体の発端とするゲームも最近多いですね。「サークルメイト/ボンびいボンボン」や「MOON.」がその例でしょうか。 |
16、精神錯乱
また、一時的なのか、恒久的なのかで色々と展開することができます。いずれも展開がひどく重くなってしまうので、ストーリー作りに慣れていない人は手を出さない方が無難でしょう。 15番の姦通とかけて、心を閉ざしてしまうような結末にもつれこむ「私/パールソフト」というパターンもあります。 |
17、運命的な手抜かり・浅い配慮
この「運命的な」というのは、昔から神話でよく使われていて、無敵、不死身と言われたジークフリートやアキレウスが死ぬのは、ほんのちょっとの「手抜かり」によるものだったのです。 |
18、つい犯してしまった愛欲の罪
ゲームとしては、「雫/リーフ」がこれに当たるでしょうか。 |
19、知らずに犯す、近親者の殺傷
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20、理想のための自己犠牲
でも泣けるシチュエーションですよね。「ナイキ/カクテルソフト」の美歩鈴の自己犠牲の後の、さらにSDCの自己犠牲的な行動により美歩鈴を救うところ、あれを劇的と言わずしてなんと言いましょうか。 ちなみに24の「三角関係」と混ぜることもできます。ちょっといたたまれない展開ですが、「コズミックサイコ/カクテルソフト」では、次のようになっていました。
1、AとBの姉妹がいました。青年Cはそれぞれを好きになってしまいました。 ……ようは、自分がいなくなることで、三角関係のもつれから離れて、AやCにとっての理想が実現される、という「自分のためにはならない、理想のための自己犠牲」パターンです。「ナイキ/カクテルソフト」の終盤も同様でしたね。いや、きついっす。 |
21、近親者のための自己犠牲
実際はこの「近親者」というのは、血が繋がっているということではなくて、ごく身近な存在ということを意味し、友人などの自己犠牲もこのケースに入れていいでしょう。有名すぎるところでは「走れメロス」でしょうか。 このシーンを見ると、ほんと切なくなると同時に、感動することができます。わざとらしいのは言うまでもなく却下ですけど。ちなみにこれをモチーフに作った鷹月の同人ソフトが「夢のなかの少女」です。 |
22、情熱のための犠牲
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23、愛するものを犠牲にしてしまう
また、この愛するもの、というのは何も人間だけに留まらず、地位や、愛用している品でも構いません。それをする価値があると認められた時点で、ストーリーはドラマチックになるのです。典型的な例を一つ。
「さあ。これを売れば少しは金になる。使ってくれ」
う~ん、べたべた(笑)。 |
24、三角関係
また、敵対、という部分を除いた、いわゆる2者からのアプローチとも呼ばれる「恋愛の三角関係」も解決が大変です。ゲームとしては、「ToHeart/リーフ」のあかりちゃん、志保、そして浩之がそれになるでしょうか。このゲームの場合は、志保は結局割り込めなかったわけですけど。 |
25、姦通
ストーリーの最後にエッチをして大団円……のパターンは「リィナ☆クリスタル/コロッサス」、 直前でエッチをして、最後の戦いへ……のパターンは、「XIX/カクテルソフト」、 直前でエッチをして、男の主人公が最後で死んでしまい、女性の方が子を宿したまま終わる……という、大局的な展開を持つ例は「エンジェルハイロウ/アクティブ」や、ゲーム途中のものですが「アマランス2/風雅システム」などがあります。 ちなみに、必ずしも姦通がドラマチックになるというわけでもないです。下手にゲーム終了後も「子がいる」ということでストーリーを与えてしまうと感動できなくなるものもあるからです。「コズミック・サイコ」や「きゃんバニエクストラ/カクテルソフト」にそういったアンチテーゼが噛まされているようです。 |
26、不倫な恋愛関係
で、夜逃げか、それとも正直に告白した結果、王から難題が出されるか、それとも間が引き裂かれるか。いずれにしても、そこにドラマが生まれます。ちなみに「YU-NO/エルフ」もこのケースに入れてもいいんですけど、あれは一括りにはできないなぁ……。 |
27、愛するものの不名誉の発見
また、愛するものは「尊敬している者」でも構いません。たとえば父親が悪徳を行なっている事を知ってしまう、など。いずれにしても、ストーリーの大きな転機になるのは間違いありません。 |
28、愛人(恋人)との間に横たわる障害
なお、普通は「障害」は外部から与えられるものばかりですが、例外もあります。 主人公自身に障害(心の障壁)があり、それを外部の影響を受けて乗り越えていく……という逆転的発想でドラマチックストーリーを作り上げた「ToHeart/リーフ」のあかりシナリオがその例外の一つです。 |
29、敵を愛する場合
味方のキャラに敵が恋をした、というパターンもよくみかけますね。「幻影都市/マイクロキャビン」、「ランス3/アリスソフト」「鬼畜王ランス/アリスソフト」などで登場してきます。 |
30、大望・野心
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31、神に背く戦い
但し、主人公が悪として神に背いたケース(ピカレスク)は全く違った展開になるますのでご注意を。 |
32、誤った嫉妬
「恋人が、誰か他の女性と一緒にホテルから出てきたのを目撃してしまった」 (真実:その女性が道端で倒れていて、近くの建物で介抱していた、など) こういった人間関係はわりと実感を与えてはくれますが、ドロドロしたものは見てていやな気分になる事もありますのでご注意ください。感情以外にも、わざとらしすぎて辟易する、ということもあります。 |
33、誤った判断
また、善悪というものなしに、いわゆる主人公の「一つの選択」として失敗してしまった場合もあります。ゲームとして考えると「再ロード」→「やり直し」という行動にでることでしょうけど。 ストーリー終盤にこれを利用すると、ダーク・アンハッピーエンドに持っていく事ができます。水中で鬼化してちゃ千鶴さんが死んでしまうわけですな(「痕」)。 |
34、悔恨
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35、失われたものの探索と発見
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36、愛するものを失った時の喪失
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37、破滅を刻む時間
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38、危機からの脱出
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39、団結と協力
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40、周囲環境の消滅
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41、解放
既に終了したイベント地点に行けるケースが多く、何もないながらも、自分(ユーザ)のこれまでやってきた事を振り返り、満足感を覚えたりもします。この辺(振り返られるところ)がゲームの楽しみの一つでもあると思うんですがどうでしょうか。 |
42、洗脳および人格消失
逆に、洗脳(=調教)を行なう権限が遊び手に与えられている場合は、背徳感も相い成り、ダークなドラマを展開させることができます。「虜/ディーオー」「無垢/にくきゅう」「Natural/フェアリーテール」などで、これは思想的に危険なものを含むので(善悪の判断を誤らせる可能性)、エゴ(歪んだ愛の形を含め)以外による理由を見つけ、それで迂回ないし否定させておくのが正しい展開だと思っています。うまくそれを行ない、ドラマチックに仕立て上げたゲームとして、「迷走都市/ティアラ」を挙げておきます。 |
43、時代経過
時代経過は言ってみれば高さ軸であり、主人公の場所で起こるイベントを横軸と考え、さらに主人公が移動する事を縦軸とすると、立体的な世界観を構築する事ができます。そういうのを目指したのが「英雄伝説3/日本ファルコム」なんだろうなぁ。 |
44、約束・試練からの挫折
死ぬために挫折、というケースでなければ、大概は「悔恨」のシチュエーションも含んできます。 たまに主人公にこれを求める場合があり、了承すると大抵はバッドエンドになります(笑)。 |
これらのキーワードに別々の発想を思い浮かべる方もいると思いますが、とりあえずは自分なりに紹介してみました。いかがだったでしょうか。たぶん創作関連の記事の中で最も有用なものの一つではないかと思います。ただ、引用した作品は意図的ではあるものの、コンピューターゲーム、さしては美少女ソフトばかりで、分からない人にはちょっと申し訳ないです。記事を書いたのは一年近く前ですが、その間に鷹月は、世界の古代神話、民話の類を一通り読んだりしていました。改めてこの分類を見ると、ぴたりと当てはまり、またこの説明記事をそれに基づき改変したいなという気持ちも出てきています。要望があれば、そういった視点から改めて説明しなおしていこうとも思います。この記事への感想などお待ちしています。 - 鷹月ぐみな |