Creation College 2009
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ようこそ、私の庭へ

ようこそ、私の庭へ
物語を彩る舞台の種類を一覧します。RPG研究向けに書いた記事ですが、汎用的に参考資料になりそうかも…
初出:2009-5-22 / Update: 2009/05/24 00:32:18


1.舞台と性質付与

 RPGの舞台を想像しましょう。地上フィールド、街、城、洞窟、それから塔。でも、いつもいつも敵のいる場所が似たような洞窟や塔ばかりでは飽きてきます。舞台を変えることで、雰囲気が変わるだけでなくその舞台なりの演出ができるため、魅力にあふれた物語となることでしょう。古いゲーマーはDQ3でピラミッドダンジョンに入ったとき、今までのダンジョンと違うドキドキ感を覚えたと思います。
 ここではそんな舞台を、ファンタジーに限らず、ゲームの舞台になりうるものについて一覧してみました。が、作り手はその舞台を単なるよくある場所としてのみで捉えてはいけません。以下に示す性質のうち1つを付与して、どのように使えるかを吟味してみます。

1. 標準的舞台
2. エクメーネ
3. スーパーハウジング
4. アネクメーネ
5. モンスターハウジング

 1.は省略。2のエクメーネは地理学上では「気象条件によって定まる居住可能地域」の意味ですが、ここではそれなりの人が過ごせる場所、という意味で捉えてください。
 3の「スーパーハウジング」は私が定義してみた名前で、本来人が住み寝泊りする場所でもないにも関わらず、そういう場所を寝泊り場所として人口密集した舞台を意味します。
 4.のアネクメーネは地理学上では「気象条件によって定まる居住不能地域」の意味ですが、ここでは気象云々でなく、単に「人の住んでいない、あるいは人の普段立ち入ることのない地帯」を意味します。スボクメーネと呼ばれるべきかもしれません。
 5.の「モンスターハウジング」も私が定義してみたもので、魔物(あるいは敵対者)がうじゃうじゃ住んだ舞台、を意味します。

 例として、たとえば「洞窟」を当てはめてみましょう。RPG的には多少の怪物が住む場所で、人はほとんど住んでいませんが、冒険者がちらほら居たり、ドワーフが一応棲んでいるというイメージでしょうか。(→標準的舞台)
 エクメーネ化すると、冒険者たちが沢山群がっている、つまりは財宝が眠っていたりするらしいドリーム溢れる洞窟化します。
 スーパーハウジング化された洞窟は、そもそもなぜ洞窟に人が住むことになったのか? を考えることになるでしょう。地上はひどく妖魔が跋扈して危険なのかもしれません。あるいは最初から地底の民の住処なのかもしれません。
 アネクメーネとしての洞窟は、妖魔には脅かされることはないにしろ、自然洞窟ならではの危険に溢れることになるでしょう。
 モンスターハウジングとしての洞窟となると、ゴブリンの一族の住処だったりオーガの住処だったり。自然と怪物退治へのクエストに繋がる展開が想像できます。

2.舞台一覧

 以下は舞台となりうるものの一覧を思いつくままに列挙します。漏れはあると思いますが、各自で探してみると良いでしょう。
 なお各舞台について、さきほど適用した「性質付与」の全バリエーションを吟味するのも面白いと思いますが、それをすると記事が非常に長くなるため、ポイントを絞るかたちでのみ紹介します。この記事では舞台一覧を紹介することを優先します。

ピラミッド/古墳
 呪いに溢れる洞窟系構造物。一般的な洞窟との差異化のために彩色・表層・構造にできるだけこだわることが推奨されます。そのためには関連資料を色々調べてみると良いと思います。

洞窟バリエーション
 RPGの伝統的舞台ですが、洞窟と言っても4タイプくらいありそうで、まずは人の手が加えられずにできあがった自然洞窟(空洞型洞窟)。それから人の手が加わった形跡のある人工洞窟。自然洞窟の中でも特に段差や寒さなどの特徴的な鍾乳洞窟、最後に海底洞窟。1つのゲームで複数の洞窟を配置する場合はそれぞれのタイプを用意してみるなどすることが推奨されます。

火山/火山洞
 一般的RPGイメージでは、通常の洞窟よりも敵が強力で、当然のように火属性の敵が多い舞台となっています。ダメージ床が多くしかも広いのが特徴で、攻略難度もやや高めというのが相場です。

山(高地)/雪山
 ダンジョン系として扱われるが、敵のボスが山頂に住んでいるとか特殊な薬草があるとかの場合は行き止まり型ダンジョンであるのに対して、ニ地点をつなぐ関門的通路としての機能もあります。

鉱山/鉱床
 人工洞窟の一種ですが、トロッコにより移動する等の仕掛けの多彩さが通常の洞窟との違い。また、ふもとに鉱山街があるとか毒ガス地帯があるとか闇の帝王をうっかり掘り出してしまったりとか、RPGのストーリー展開上に絡みやすい上位ダンジョンとして愛用されています。

地底
 地下は全部洞窟のカテゴリとつい思ってしまいがちですが、ファンタジー分野では地底は実に豊かなフィールドとなりえます。神話や昔話には、太陽があり街がある地底世界がしばし登場してきます。要するに地上=普段の世界、に対応する地底=死の世界、または異世界全般、という対比で成立している舞台と言えます。

塔/灯台
 ドラクエのおかげでRPGの伝統的構造物となった感のある塔ですが、本来上は塔はその機能をしっかりもって建てられた建築物です。軍事的目的の見張り台/監視塔、宗教的目的の塔(ストゥーパ)、宗教的要素も含むも威厳を見せる目的も踏まえた鐘楼塔、それから交通目的で立てられた灯台など。
 ただしRPG的には、古代人やら神が建てたとかされる理由での謎の巨大な塔が存在するという位置づけも十分アリだと思います。塔のその存在感は異彩を放ち、終わりまで延々上っていくというその形而上的なモチーフも好まれ、ゲームの主要舞台として単独で存在することもしばしあります(ドルアーガの塔、SaGaの塔、バベルの塔、カオスエンジェルズの幻の塔など)。

巨大樹
 基本的には塔のカテゴリーです。「世界樹」はその響きの良さも含めてゲームの中終盤でよく舞台として使われたりします。また、そこまで大きくない単なる巨大な樹を加工するなり、複数の大樹をつないで作る樹上都市というバリエーションもあります。

石都市、石柱都市
 超巨大な岩の内部をくりぬいて作った街とか、複数の巨大な石柱に橋やらを架けて都市化したもの。ファンタジーでは好まれる舞台の一つで、大抵この手の街に冒険者が辿り着くと何らかのトラブルが発生し巻き込まれることになっているようです(笑)。

円形競技場(コロッセウム)
 基本は巨大な競技場ですが、観客誘導の観点において地上階は複雑な構造を成し、アトラクションの仕掛けのために地下階は複雑なカラクリに溢れています。

 乗り物としての機能を有する船ですが、大型帆船・客船・艦船クラスとなるとそれ単体が十分、ダンジョン的舞台になりえます。大型客船を舞台にしたアドベンチャーゲームなどは数多く出ています(タイタニック、ブラインドゲームズ、ミシシッピ連続殺人事件などなど)。
 地上と隔絶された空間であるがゆえに独自のルールを設定しやすいのも特徴です。
 勿論ですが、モンスターハウジング化したものは幽霊船だとか海賊船となります。

 RPGの伝統的な街のほか、カジノシティやダウンタウン&スラムシティがあります。ゲームによっては街そのものがゲームフィールドとなることもあります(英雄志願とか)。
 アネクメーネ&モンスターハウジング化すると廃墟としてダンジョン系舞台にもなります

アウター&インナータウン
 近未来物によく見られるのですが、上層民と下層民の区域で完全に遮蔽されているケースがこれにあたります。銃夢とか幻影都市など。この場合下層はひどく無法化していたり、周辺には魔物が徘徊する場所になっていたりします。

ドームシティ
 バイオハザードや核汚染が発生した近未来物、あるいは宇宙空間の植民都市などで見られる形態で、街をドームで覆い尽くし、その中で住人は自給自足を満たせるようになっています。

シェルターシティ
 ドームシティの親戚ですが、こちらは地下に作られるもので、小規模かつ、外敵からの防御施設という機能を持っています。こちらも最低限自給自足ができるようになっています。

神殿/聖廟
 宗教的目的で作られる建造物ですが、RPGにおいては上位モンスターの巣窟として定番になっています。

城/砦/城塞
 城にも色々な種類があり、時代や用途によって変わってきます。DQで言うなら1のラダトームが単独型。メルキドは街をすっぽりと囲う城塞都市型となります。メルキド城なるものはありませんが、建造タイプからすると封建領主の居城という位置づけなのでしょう。
 単に砦と言った場合は防衛的色彩の濃い建造物となります。
 時代が建つとこれらは棄てられることもあり、その結果として盗賊や魔物が住み着くモンスターハウジング化することになりますし、あるいは売られて裕福な一家が城に住むというケースもあります。

洋館/豪邸
 たんなる家も有力者の建築物となると、たちまち複雑なマップ構造を持つRPGの舞台となりえます。古びた洋館はホラーの舞台として言わずもがな。

森/密林&樹海/熱帯林
 RPGはあんまり森そのものがダンジョンになることは洞窟に比べると少ないのですが、森の中は外の世界から隔絶された閉鎖空間でもあり、そしてまた幻想と神秘に溢れた舞台でもあります。いきなり見知らぬ建造物が建ってるとか、見知らぬ村が突如現れるとか、湖があって岩の上にエルフが居たとか云々。もう少し森を重視したRPGがあってもいいような気がしています。

一般フィールド(平地、黄土、雪かぶり、砂漠、湿地、海、川、舗装路)
 RPGの各舞台をつなぐフィールドも勿論のこと重要な舞台です。ウルティマやDQによってドラクエタイプのフィールドがデファクトスタンダード化してしまいましたが、もっと一般フィールドも歩くのが楽しいと思わせるような、起伏に飛んだ風景にできるはずです。作り手側からすればその分のチップを用意するのがひたすら大変な作業になってしまうわけですが……。

巨大石像・仏像
 現実にあるこういった像も中は人が入れるようになっており、十分RPGのダンジョン舞台として活躍します。
 また、人型であることを活かした機能として、動くようになっていたり目から怪光線が出たりなどの何らかの機能を持たせる事があります。この点が塔との違いと言えます。

研究所、工場
 ゲームで出てくるこうした建物は大抵ろくでもない研究をしているのが相場。工場はともかく、この手の研究所はなぜか広くダンジョン化しているのが多いですね。

遊園地、テーマパーク
 現代舞台なのにファンタジー的な装置を出せる舞台として重宝されます。この手の建物は必要上裏道や地下道が沢山あるため、ダンジョンとしても成立しえます。
 RPGではないですが「猟奇の檻第2章」のように稼動中のテーマパークを舞台とした事件を扱うゲームや、リアリティは無視したパロディゲームである「デゼニランド」、あとは廃園した跡地を舞台としたホラー物、戦闘物などなど多数の実例があります。

列車
 船と同様に移動機能を持つ舞台です。日本的な列車だとすぐに目的地に付いてしまいますが、何日も運行する海外の列車や、それをモチーフとするファンタジー系の列車においては十分に物語の中心舞台になりえます。銀河鉄道のように列車→停留地→列車→停留地、というサイクルでの物語なども非常にゲームとして魅力的に仕上がりそうです。

地下鉄駅+地下鉄
 地下鉄の駅はダンジョンさながらの様相を呈します。つまりダンジョンの舞台としても有力であるという事です。廃線を舞台としても良いですし、地上が原爆やバイオハザード化するとか大地震で地下に閉じ込められる形にしても良いですし、非常に魅力的なインスピレーションを与えてくれる舞台です。

墓地/地下墓地(カタコンベ)
 ゲーム的にはゾンビやスケルトンがうじゃうじゃ沸いてくる舞台です。日本型の墓地は地上ばかりですが海外では地下墓地が割とありまして、内部たるや中々に戦慄のダンジョン状態です。ディアブロではおなじみですね。
 余談ですが、ゾンビやスケルトンが沸いてくるということはその土地柄は土葬であることを意味します。火葬文化ではそんな姿で蘇りようがないため、この場合はゴースト・レイス系で代替することとなります。

巨大獣の口の中
 巨大な獣の体内に入るとそこは不思議なダンジョン空間だった……というもの。現実的にありえるはずがない舞台ですが、神話ではしばし登場するモチーフです。

学校
 学園恋愛物に使われたりホラーに使われたり、伝奇物として悪者と戦う舞台となったり。それなりに広く各種施設があり、ゲームの舞台としてうってつけと言えますが、RPGの舞台として見ると構造的にはスッキリとしすぎていて使いにくい面もあり、旧校舎・廃校舎という設定を持ち出してきてダンジョン化するケースが見られます。

公園
 公園と言ってもここで紹介するものはRPGの移動の舞台として使える規模のものであり、つまり自然公園、記念公園、植物公園と呼ばれる類のものです。日本のイメージではこうした公園は単に緑豊かで木々も穏やかなものが多く静かな場所というイメージがありますが、海外の巨大公園はとんでもないサイズの植物が乱れ立っていたり博物館などの建物が複数併設されていたりで全体がかなりの迷路パビリオンと化しており、これをモチーフとして活用しても良いかもしれません。

病院
 主にホラーやサイコ物の舞台として使われます。学校よりもさらに外界からの独立性が高く、薬・各種装置なども活用できることから、色々ととんでもないストーリーが展開されがちです。但し病院は本来は生命を護る施設であるがゆえに、生命軽視的な物語をリリースすると、しかるべき団体、勤務する人間から批判を受けることがあるので気をつけて扱いましょう。

下水道/地下水路
 ある程度の文明レベルのある街であれば水路が存在することになります。地下に作られた水路設備は巨大なダンジョンの舞台にもなりえます。DIABLOなどでもおなじみですし、レ・ミゼラブルなどでも逃走と追跡の舞台として使われました。
 ネズミやゴキブリなどの不浄生物のたまり場というのがゲームでの相場です。

監獄/収容所
 通常は罪人を収容する施設ですが、ゲームなど物語的には無実の人が捕まるとか、反体制であるがゆえに牢にブチこまれたりとか、性質的にロクでもない場所として使われるとともに、ほぼ確実に脱出のシナリオへと繋がります。監獄は高い塀と見張りに囲まれ、外の世界の法とは切り離された独特の舞台であり、物語の舞台としては魅力に溢れています。

高層都市
 近未来物でよく使われる舞台のひとつ。階層別エレベーターやカードキーなどで移動することを余儀なくされるため、からくりダンジョンとしての機能を持ちます。入口を封鎖すればたちまち孤島化するのも物語に使いやすいポイントと言えます。

モール
 日本で言うならイクスピアリやアウトレット、海ほたるなどの商業施設街のことで、複数階層に実に沢山の商店が立ち並び、規模が大きくなればなるほどちょっとした迷路となります。日本のアウトレットタイプは外と隣接しているため孤立性が薄いですが、海外の場合は外の熱気を防ぐために遮蔽施設化しており、こうなると出入口を封鎖することで容易に閉じ込め型作品に変貌できます。

無人島/孤島
 難破などの理由で1人で漂着するケース(ロビンソン・クルーソー)、あるいは複数人がたどり着くケース(十五少年漂流記)、または意図的につれてこられる場合(バトルロワイヤル)などいくつかのパターンがありますが、人の住んでいない地ということでまずは迫り来る自然の危機からどう身を守り生命を維持していくか。続いて、そこでどう生活していくかといった段階に移り、その後で何らかの難問を解決したりして最終的には脱出する、というのが基本的な無人島物の流れでしょうか。
 法が通用せず、法に守られない場所でどう生き抜いていくか、というサバイバルテーマは昔から多くの書き手にインスピレーションを与え続けています。

宇宙船
 船のSFバリエーションとも言えますが、移動フィールドとして使えるほどの大きな船は軍艦を除き原則的には戦闘能力を有しないのに対して、ゲームにおける宇宙船の場合は、輸送船を除けば戦闘能力を有していることが多く、居住機能、移動機能とあわせて物語舞台として非常に魅力的です。

メタフィールド
 ある物体を介して非科学的に別の空間に移動する、本来ありえない入口装置。

 本、額縁に飾られた絵画など:本や絵画の中の世界へ。
 ドア:空間あるいは時空、次元を飛び越える謎の扉。
 クロゼット:幻想文学で使われる入口装置。異世界のフィールドに繋がる。
 引き出し:ドラえもんで使われた入口装置。
 :部屋の窓から出るとまた別の部屋があるとか。
 モニタ:モニタに写る異世界に移動、あるいは逆にモニタから女の子が出てくることも。
 水晶球:人の心の中に入ったり時空を移動したり。
 旅の扉などワープホール:これはドラクエでお馴染み。
 幻術、夢:ファンタジーでは色々とお馴染み

3.終わりに

 この他、天空やら天国/地獄、土蔵、電脳空間などなど、探せば舞台となりうるものは色々あると思います。しかし全てを網羅しきるのが目的でもありませんのである程度書いたこれくらいでやめておきます。
 ともあれこれだけの種類の舞台がある以上、中世型RPGであったとしても、もはや伝統的な「城・街・地上・洞窟・塔」ばかりを出す必要はありません。バリエーション豊かにプレイヤーを楽しませつつ、面白い出来事をそこで起こすようにして楽しんでもらえるようにしましょう。




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