Creation College 2009
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RPG問題考察

RPG研究/RPG問題考察
RPGが好まれない点を挙げ、改善するためにどうすればよいかを考察しました。
初出:2009-05-18 / Update: 2009/05/24 00:31:59


はじめに
 RPGが好き、という人も多いですが、興味ない、嫌いという人も相当数増えているのも事実のようです。かつてあれだけ栄華を誇ったジャンルでしたが、なぜこうなったのでしょうか。短く言えば飽きられてきたということになるのだと思いますが、そうであれば尚更、作り手は原因をしっかり考察し、改善していかなくてはいけません。
 以下、ネットで拾った「RPGの嫌なところ」をまずは列挙してみました。なお、MMORPGは今回のケースから除外します。

  • 長すぎて途中でだれてしまう。クリアした記憶がほとんど無い
  • 色々忙しくて途中で止めるが、再開するとストーリーを全く覚えてなくて途方に暮れる
  • 経験値稼ぎ・お金稼ぎに延々時間を使うのが苦痛
  • 自由度が他のゲームに比べて低い
  • ストーリーに魅力を感じない
  • 寧ろ自己満足のストーリーに嫌気がする
  • 全体的にRPGというジャンルに新鮮味がなくなっている
  • 戦闘が面白くない
  • 妙に複雑だったり難しいRPGが増えてきて面倒くさい
  • ネットに攻略データが落ちており見ないと損だが見るとつまらない

 他にもあるとは思いますが、とりあえずこの10点のみ。
 では、これらについて原因・現状分析と改善のための考察をしていきます。

1. 長すぎるという問題
 市販ソフトの場合は短ければ短いで問題になるわけで、基本それなりの長さが必要となるわけですが、長いことが問題にされてしまう。面白いと感じるならば長い事も許容されるわけで、すなわちこれは面白くないと思ってしまうがために、最後まで続けられないという状況が発生しているものと思われます。もう少し言い換えると、最初のほうがそこそこ面白いと感じていたものが、中盤以降その面白みを失ってしまうユーザがいるような気がします。
 RPGのよくある構造としては、主人公自身か、あるいは主人公の身近なところで事件が次々と起きて、それらを解決していくうちにもう少し大きなレベルでの事件に巻き込まれていき、最終的にはこの大きな問題を解決することになる、というものなのですが、この両環構造のどちらかに問題があるような気がします。最近だとたとえば私がテイルズシリーズをプレイしていて思ったことなのですが、妙に中盤以降はパズルっぽいものに凝るあまり、それに苦労しているうちに「そういえば何のために戦ってるんだっけ…」という点が曖昧になってきてしまうことがありました。主人公たちが大きな問題に対してやることが見えないか、見えているのに一向に解決に進む気配がない、あるいはその途中で詰まってしまう時に、まあまた次回やりますかねとそこで終了してそのままになってしまうのです。これはFFシリーズでも例外ではありません。
 しかしなんにしても、モヤモヤしていた色んな部分はクリアして初めてその昇華を果たせるわけで、これを果たせないまま止めてしまっては、RPGに対してモヤモヤとした気持ちを抱いたままになることは必定です。プレイヤー側に昔より継続力がなくなっている面はありますが、作り手としてももう少し彼らを惹き付けるための努力が必要であると思います。そのための改善手段はいろいろあると思いますが、少なくとも、ボリュームの水増しについては一考すべきですし、終盤の入口になりストーリーが加速してきてからは、漫画などを読めばそのテンポについて分かると思いますが、読み手が望んでいるテンポのまま進めるべきであり、それを遮って「ここから七つの封印を解かねばならない」だとか「8つの武器を手に入れねばならない」などといったクエストを発生させるのは明らかにマズいと言えます。

2. 中座によって展開を忘れてしまう問題
 RPGに限ったことではありませんが、クリアまでに1週間以上擁する物語系のゲームにはかならずこうした問題が発生します。作り手は、プレイヤーが任意の地点でゲームを止めてしまうことを想定し、2ヶ月も3ヶ月も離れていた人は仕方ないにしても、2週間程度の余白を開けての再開に対してはケアを施すことが必要と思われます。これを改善する手段として多少使えそうなのが「相談・考えるコマンド」の導入であり、会話によって今なすべき事を語ってくれます。但しこれはTODO:の確認程度であり、物語の流れまで確認するものではありません。くどさも出てくるかもしれませんが、「ここまでの物語の流れ」をいつでも確認できるようにするとかの配慮もアリなのかもしれません。

3. 経験値稼ぎ/お金稼ぎが苦痛と感じられる問題
 これらはRPGの伝統的な進行形態ではありますが、この部分が苦痛と思われているのは深刻な事態と言えます。しかし、改善は簡単なものではありません。あるユーザは「もっとサクサク進めるようにして欲しい」と言いますが、与える経験値やゴールドを2倍にすることは容易です。しかしその結果、今度はヌルすぎるという印象をもたれるのみならず、戦っている楽しさも少ないとよりネガティブな事を言われてしまいかねません。
 ただし私はこの問題は、DQスタイルをそのまま踏襲しようとする作り手側にやはり原因があると考えます。DQスタイルが悪いわけではないのですが、この経験値稼ぎ、お金稼ぎのプロセスが何のために設置されているのかというのを考えずに設置すれば、そりゃただの時間稼ぎ的存在と思われても仕方がありません。
 本来は戦闘の楽しみを味わうためにであり、また困難を苦労によって乗り越え、そこに楽しみを味わうという狙いで設置されているものです。これをしっかりとユーザに与えられないのであれば無いほうがマシということもあるような気がします。
 個人的にはワンダリング(ザコ)戦闘の回数はもう少し減らしてもいいような気はしていますけれど、デザイン次第では色々な解決策があると思います。私にもいくつかのアイデアはありますので、他のページの方で少し述べてみたいと思っています。

4. 自由性の問題
 一本道RPGが良くないというのではなく、RPGが全般的に他のゲームより自由さが乏しく感じる、という指摘です。ACTなんて構造的にはド一本道がいくらでもありますが、手さばきと言う操作自由性のおかげでこうした指摘を逃れているようです。
 RPGはRPGなりに、フィールドや町を自由に歩けて買い物もできて自分のテンポでゲームを進められるという独特な自由性があるとは思うのですが、今はそんなことは当たり前で自由性として認められていないのかもしれません。
 この問題の解答の一つとして、ACT要素を付与するという手もあるにはありますが、それは横滑り的解答であって、従来のRPGのままで何とかならないものでしょうか。
 もちろんストーリー進行の自由度を上げる、という方法はあるでしょう。ただ、日本のプレイヤーはどちらかというと「やるべき事」は明確に指示してくれるゲームを好むようなので良い処方になるとも言えません。
 この問題については色々考える必要があるかと思いますが、ここでは一つ、街やフィールドを歩き回ることにもう少し楽しみを味わわせられないかという点で改善を模索してみたいと思います。考えてみれば、DQでお馴染みのタル割りツボ覗き箪笥窃盗などはこの点の面白さに寄与しているのかもしれません(個人的には他人の家の物を盗むのはゲームであってもどうなのかとは思いますが…。)。しかしそれだけでは全然足りていない。手当たり次第に草が刈れたり(ARPGになりますがアランドラとかゼルダがそう)、芋が掘れたり麦が収穫できたり卵を鶏から採集できたり(マビノギ)、そういった楽しみがもっともっとあればいいなと感じています。ただ、そうしたものはイベントと連動するのは有りにしても本質的にはフレーバー的な位置づけで用意されるべきであって、これを超えてゲームの進行にクリティカルに直結するような役割、たとえば見えない場所の宝箱やらをわざわざ視点回転させて探し回って欠片を見つけないと一切先の世界に進めなくなる等というような仕掛け(DQ7)は致命的な失策と言えます。

5. RPGのストーリーの魅力を感じない、という問題
 これはシナリオライターの腕の見せ所……なのでしょうか?
 ライターさんの腕はそこそこだとしても、既にいくらでもあるような筋の物語を提供すれば飽きられるのも確かです。魔王を出すのが悪いというわけでもないし、世界崩壊するのもいい加減ダメとも言うつもりはありませんが、過去の有名な作品をなぞっただけに思われるものはやはりマズいでしょう。RPGはその構造上、基本展開には似てしまう部分が出てくる面はやむないのですが、それをどう楽しくプレイさせるか。世界観、テーマ演出の描写、出来事の面白さ(さらに次にはどんな面白い事が待っているのかとプレイヤーに期待させるくらいの)、こういったものを考えるのはライターさんの仕事です。しかし、RPGにおいては彼だけに全ての重責を負わせるのではなく、ストーリー以外の部分においては、ゲームデザイナーがもう少し頑張らなくてはいけないと思います。戦闘をどう楽しませるかとか。
 ただ、個人製作などにおいてはこの部分で悩んで開発が進まないというのもいけませんので、とりあえずは自分が楽しいと思えるものを素直に作っていけば良いのだとは思いますが。

6. ストーリーそのものが不快と思われる問題
 物語系のゲームには当然物語があるわけですが、特定のタイプの話あるいはモチーフにうんざりする人たちがいます。それが自分が作りたいものであれば躊躇う必要はありませんが、遊びの要素を越えたものを組み込むときには注意が必要です。
 どんなものが特定の読み手に不快に思うのかはいろんなものがあると思いますが、少しだけ例をあげておきます。

やたら現実で起きている社会問題を取り込もうとする
 作り手が現実の事柄に興味を持っており、それに対するある主張をゲームの中で提示するという作品はそれはそれでアリだとは思います。但し、あまりにストレートに提示すると「なんでゲームの中に現実問題が…」と引かれてしまいます。
 「楽しませる」という位置づけではゲームとは近接関係にある児童文学の分野に対してリリアン女史が著書の中で「子ども向けの本を書こうとする大人はやたら社会改造のテーマを選びたがる。しかしこれは子どものために書いているというよりも、大人自身の真剣な興味をただ反映させているにすぎない」ぽいことを語っていました。
人がやたら死ぬお話
 逆にそういう話を好む人もいますが、やたら作中人物を殺すことに興味を持っている作り手の作品は、それを好まない人はすぐに拒絶します。
選択による「行為」で、プレイヤーに罪悪感を与えようとする意図が見え見えな作品
 作り手自身がしかけている狡猾な罠によって「お前はひどいやつだ」と裁かれるのはどうも納得がいきません。なお、行為をしない選択によって、それによる結果を提示する形で罪悪感を与える手法は逆にアリだと思います。前者の例は闘神都市IIで女性を突き落とす選択肢の出るシーンなど。
プレイヤーを無視して勝手に進んでいく作品
 NPC同士が勝手に会話して行動を決めるとか、主人公キャラがプレイヤーの思いとはまったく裏腹な行動をすぐに選ぶなど。
 あと、単純にイベントシーンがやたら長い作品も同様です。 

7. 新鮮味の問題
 他のジャンルについても起こっていることですが、全体的に新鮮味がなくなってきているという指摘について。「RPGはもう飽和している」とも言われています。ある1つのゲームについて遊び始めてから飽きるまでのゲームライフサイクルがあれば、ジャンルについてもいろんなパターンを尽くした結果、飽きてきたと評されるのは仕方が無いことかも知れません。こういう時代においては、いろんな方向への横滑りを模索したり、新しいパターンを見つけるなり、あとは忘れられた古いパターンを掘り返してくるなり、そういった努力が必要になります。
 しかし、しばしミニゲームをRPGの中に複数織り込む手が市販物で見られますが、これは本質的な改善になっているとは言えません。サブゲームは1つの作品のライフサイクルを伸ばす役には立ちますがこれだけで解決させようと思うと無理があります。

 RPGの楽しさの要素を改めて分析してみる必要があると思います。ACTは操作を覚えることによってクリアしていくという成長を楽しむゲームなのに対して、RPGは逆にそうした手さばきに頼らず、かける時間と知恵によって障害を乗り越え成長を感じ、物語世界に没入し楽しむというゲームです。(横滑りしないRPGにおいては)このプロセス自体は原則変えようがありませんが、このどこかに新鮮さを織り込ませることを模索してみてください。

8. 戦闘がワンパターン化している問題
 DQ系の戦闘がつまらないとは昔から言われている指摘であり、それならばとAction要素を入れてみたり、「なんとかシステム」を取り入れるだの、各社さまざま模索しているようです。この問題は3.であげた経験値の問題と若干絡む面がありますが、戦闘システム自体にもやはりいろんな改善は必要な時期だと思います。RPGにおいて戦闘は花形であり、ここをどう楽しくするかはゲームデザイナーに課せられた義務とも言えます。これについて改善策を論じようとすると相当長くなりますので、ここでは触れないでおきます。

9. 高難易度化、複雑化問題
 正直これについては易しいRPGと複雑なRPGと棲み分ければいいんじゃないかとも思っていたりしますが、マイペースでゆったり進めるタイプのユーザはやたら複雑なシステムのRPGは戸惑ってしまうものです。
 この場合、きちんとチュートリアル的なものを提供すれば良いと思いますが、単に文章でズラズラ述べる説明は一度で頭に入るわけがありませんし、そうでなくても分量が多いと面倒だからとさっさと本章を進めてしまうプレイヤーが多いような気がします。なので、必要最低限覚えて欲しいものはゲーム展開の中に織り込む形にして教えさせるという意味でのストーリー内チュートリアルの実装が望まれます。(メタルギアがそうしているように、動きのチュートリアル部分だけゲームから完全に独立させていつでも参照できるようにする、というのはアリかもしれません)

10. ネットと攻略情報の問題
 RPGに限ったことではありませんが、市販作品はすぐに攻略サイトやデータサイトが登場します。皆さんはこうしたサイトは使いますか?
 「使わないか、詰まったら見る」がスタンダードな活用方法でしょうか。実際、初めから見てしまうと、ガイドブック片手に博物館を回るごときもので、ゲーム性が極端に低下します。しかし困ったことに、こうしたサイトには隠し通路・隠しアイテム等のデータ情報が満載されていることをみんな知っています。「一度目は自力で。二度目はサイトを見ながら」と二回プレイするようなユーザなら良いですが、長いことが特徴のRPGというものは二度プレイしない人は沢山います。そうしたユーザは、1回でできるだけ損しないように進めたいという気持ちが働き、結局そういったサイトをチラチラと見てしまうようです。そうすると、作り手側が想定していた楽しさをプレイヤーに与えられないという事態が発生してしまうわけで、それで「つまらなーい」などとさらに言われてしまう始末。この問題についてはどう改善したものでしょうか。二度プレイさせるような仕掛けを何か考えてみます?
 この点、攻略・データサイトが容易には現れない同人・個人作品は比較的意図通りに遊ばせることができる点で有利と言えるのですが、攻略サイトベースで遊んでいるユーザは色々とヌルい遊び方に慣れきってしまっており、ちょっと困難にぶつかるとプレイをやめてしまう人が増えているから困ったものです。

終わりに
 あまり深い考察にはなりませんでしたが、RPG製作のヒントになれば幸いです。





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