Creation College 2009
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アクションゲームの基本構造

アクションゲームの基本構造
どのようにしてアクションゲームのゲーム性が成立しているのかというお話であり、この基本構造を知ることで容易にアクションゲームの基本部分がデザインできるようになります。たぶん。
初出:2009-05-27 / Update: 2009/05/27 08:19:03


1. はじめに

 アクションゲーム(ACT)はコンピュータゲームのもっとも基本的なジャンルの1つであり、「手さばき」(=アクション性)によって目標達成することを目的としたゲームです。ジャンルというよりむしろゲームの基本要素と言っても良いほどで、直系に様々な下位ジャンルを持つだけでなく、別のジャンルにアクション性を付与したものが独立したジャンル名を与えられているケースが多々あります。

◇アクションゲームの直系
 ジャンプアクション、シューティング、格闘ゲーム等

◇他のジャンルとの結合
 アクションRPG、アクションパズル等

 ACTの醍醐味は、はじめはその操作に戸惑うも、プレイするにつれ操作の要領を覚えて感覚的に主人公キャラを操作できるようになる、短く言うと「上手くなる」のを実感できるところにあります。また、シンプルな構造でもゲームとして成立するがゆえに、ゲームプログラマの初級者がまず作ることの多いジャンルでもあります。

2. ゲーム性の基本構造

 ACTの基本的操作はまず次の2種類から構成されます。1つは自発的操作。スーパーマリオで言うならば、土管の中に入ってみたり、目の前の穴をジャンプで飛び越えるという行為。あるいは操作そのもの。もう1つは他動的な強要操作。クリボーが近づいてきたのでジャンプで避ける等がこれにあたります。
 そしてこの2種類の操作を軸として、ゲームに目的、目標を与えます。よくある目標は、スーパーマリオで言うなら右端にたどり着きポールに捕まる「ゴールへの到達」ですが、他にも「障害となっている相手を倒す」や「特定の条件を満たす」、及びこれらの複合があります。(ステージの最後にボスを倒す、などは複合型と見なせます)ここでのポイントとなるのはゴールに易々とたどり着けるようではいけないという目的において障害・難関を設置することです。(それゆえ複合の形を取りやすくなります)
 目標にたどり着いたらクリアとなりますが、ゲームエンドではなくてステージクリアという形で次のステップへと移ります(ステージ制)。最近は終わりのあるゲームがほとんどとなりましたが、昔は延々とエンドレスにステージが続く作品もありました(バルーンファイト等)。
 そして、この目標に対する主人公への働きかけを必要に応じて追加します。一部例外もあるにしろ大別すると3種類、(a)強制スクロール等による働きかけ (b)時間制限による働きかけ、(c)働きかけをせずにユーザのペースに委ねる に分かれます。
 (a)はシューティングゲームや音ゲーなどの多くで採用されていますが、もちろんジャンプアクション物にも採用されることがあります(拙作の「THE ESCAPE」)。興味深いのはこの場合、自発的操作であったものも半ば強要操作に変貌してしまう点です。ともあれこのパターンについては自動的にゴールまでたどり着き、そこで(ゴールポイントでの戦闘などが無ければ)目標達成となります。
 アクションゲームにおける(a)(b)(c)の採用比率は(あくまで感覚的なものでと前置きしたうえで、)おそらく1:7:1くらいでしょうか。圧倒的に時間制限系ゲームが多いわけですが、なぜこのような比重になるかと言えば2つの理由が考えられまして、1つはアクションゲームなどは全てゲームセンター由来の製品であり、ゲーセンでは回転率を上げる必要がありチンタラ遊ばれては困るわけで、制限時間を設ける必要がありました。その流れで現在に到っているという点。もう1つは、時間制限をつけることで実に簡単にゲームとして成立できてしまうというそのお手軽さでしょうか。(c)は自発操作が主流のゲームになるわけですが、この場合は容易に最高のパフォーマンスをされてしまうのに対して、(b)時間制限を付ける事で半強制要素が生じ、その中での手さばきに大してミスを誘います。この時間制限の厳しさを変えて、容易に難易度の調整が可能であり、かつゲーム性すらも変化しうることができます。段階的にまとめると以下の通り:

○時間制限の拘束度合い(その1)

【時間制限がない】=(c)
 敵キャラや動くバーなどの他動的な強要操作こそあるものの、じっくりと1つずつ目の前の障害をクリアしていく。障害のリドル性が高いものや、マップが迷路化している探索型作品で採用される(例:プリンスオブペルシャ、コナミワイワイワールド、拙作の迷牢)。時間制限性によるお手軽なゲーム性に頼れないためしっかりとしたコンセプトデザインが求められる。
 時間制限が無いか、超ゆるゆるにする代わりにタイムアタック型にして、どんどん縮めていくことを楽しむ類のゲームも存在します。(拙作の「Tower of Shadow」)

【時間制限がゆるい】
 普通に障害を越していけばゆうに制限内にクリアできてしまうもの。これはフィールドなどを色々調べながら進んでいってもらいたいというデザインで採用される。代表例が「スーパーマリオ」。また、その緩めの時間内で鍵探しのようなクエストもこなすことを要求する作品の代表例が「マイティボンジャック」など。
 緩いからといってもあまりにトロトロしていると終盤時間が足りなくなって、それがミスを誘うのは言わずもがな。

 なお、制限時間を過ぎると即LOSE(解説は後述)になってしまうものが多いですが、そのタイムを明示せず、時間が来ると何らかのペナルティが発生し、早くクリアしない限り難度が異常に上がってしまう、という仕掛けを取る作品もあります。例としては…「バルーンファイト」では一定時間を過ぎると雷が襲ってきます。「ドラゴンバスター」ではケーブシャークが配置されます。迷宮組曲では倒せない敵が現れます、などなど。

○時間制限の拘束度合い(その2)

【時間制限が厳しい】
 ゆっくり移動するとタイムオーバーになってしまうので、可能な限りはどんどん先に進まないといけない。急ぐ必要があるため、自発的アクションに対してもミス率が上がる。古い例ですが「エキサイトバイク」「F1ゲーム」などのレース系アクションがこれにあたるか。
 「魔界村」のように元から操作性が悪いのに時間制限も厳しめに設定されていると、糞ゲー扱いされるので注意(笑)。

【2,3回行動ミスったらアウト】
 一瞬の手さばきの連続だけでひたすらゴールへ駆け込んでいくもの。1ステージのクリアまでに必要な時間が非常に短く、その代わりに何度もトライできる作品で採用される。ソロレースゲームの上級者向けなどもこのレベルに設定される。拙作の「Roller Drive」もそのシビアさにおいてこちらに分類するのが妥当か。

 時間制限の派生として、減点制やクリアライン制を取るものもあります。減点制は時間制限があるもののミスなどによってタイムペナルティが加えられたり、逆に良い操作をするとボーナスが入り、なんにしても残り0になるまえにクリアすればよいという類のもので、滑降型スキーゲームや燃料制レースゲームなどで導入されています。クリアライン制は一見すると時間制限制とは別物に見えますが、要するにこの減点制の延長線上にあるシステムで、音ゲーの多くで採用されています。

失敗時の処理(LOSE)
 アクションゲームにはミスはつきものです。しかし、ミスですぐにゲームオーバーになっては大変厳しいですから、ライフ制(アルゴスの戦士)、あるいは残機制(魔界村)、あるいはまた両方併用制を取り(例:グーニーズ、ムーンクリスタル)、これらが無くなった時にゲームオーバーという仕組みを取ることになります。難易度調整としてはステージデザインそのものの調整だけでなく、残機などを予め多めに与えるなどで調整する方法もあるようです(アトランチスの謎、海腹川背など)。
 3種のいずれを採択するべきという話についてはゲームの難易度や性質によって変わってきますので、基礎構造の段階では規定しなくても良いものとします。

3.組み立て

 では、ここまでに挙げた構造(特にbの時間制限系)を使って机上モデリングしてみましょう。要するにはまとめです。

【ポイント再整理】

・自発的操作
・強要的操作
・目標と障害
・進行性(ステージ制かそうでないか)
・主人公への目標到達への働きかけ(スクロール/時間制約等/あるいは何もなし)
(・ライフやロスに関する取り決め)

 スタートがあってゴールがあり、主人公を操作して移動するタイプの何らかのゲームを想定します。ゴールまで容易に歩けたらゲームにならないので、歩き方に慣性をつけるとか、トゲやら炎のセルやら回避させるべきもの等を設置します。しかし、気をつければ容易に回避できてしまうのではゲームにならないので、動く敵キャラを設置して(他動的強要を導入し、)難易度を上げます。しかし、スルスルと巧みに動かれてすぐにゴールに辿りつかれてもゲームにならないので、マップに迷路構造を導入したり、すぐにはたどり着けないように鍵などを配置するとか、敵を倒さないといけないようにするとかの仕掛けを導入します(複合目標)。それでもじっくり腰を据えられて動かれると結局は簡単すぎるために、時間制限を導入します。オーソドックスではありますが、これでアクションゲームの自立的ゲーム性が簡単に満たせます。
 そして、ちょっとの時間でゴールにたどり着いて即エンディングではゲームと言いにくいので、複数ステージを導入することになります。最初は簡単に、後ろのステージは色々なギミックを搭載し、プレイヤーの習熟度も考慮しつつ適切な難易度を与えてあげます。これでステージ制時間制限付きアクションの基本モデルが出来上がりました。もちろんこれは肉付けのない骨組部分であり、どのようなゲームを作るかという具体的なアイデア、デザイン、ゲームルールによって肉付けをしていき、実際のゲームとなっていくわけです。
 時間制限制を安易に取り入れることについては、それが緻密なゲームデザインを必要としないという事で筆者はあまり好きではないのですが、何はともあれここまでの説明を読むだけでもう、読者の方々はスイスイとオリジナルのアクションゲームをデザインすることができるはずです。

 ゲームプログラミング系の本やサイトは、性質上仕方がない面もあるのかもしれませんが、先にシステムありきで書かれている事が多く(例:ジャンプアクションゲームを作ってみよう、とか、パックマンゲームを作ってみよう、とか)、その読み手に対してサンプルのシステムをなぞることをまず要求します。もちろんそれを土台として拡張していけば良いのですが、それはあくまでプログラマ的な習熟アプローチであって、デザインとしての習熟アプローチはここで述べたような流れで考えを進めていかなくてはいけません。

4. 既存作品の基本構造を眺めてみよう

 このトピックで述べたかったことは既に書き終えてしまいましたが、おまけとして、既存のアクションゲームをいくつかピックアップして、その構造と要素がどのように設定されているかを先ほどの観点を用いて眺めてみようと思います。
 「はじめに」で述べたアクション系のジャンルから1つずつ。

01: スーパーマリオ(ジャンプアクション)
 左右移動とダッシュ、ジャンプ動作。但し移動には若干の加速あり。
 ステージ制だが、4ステージ1組とするワールド&ステージ構造を取る。強要動作を要求する敵は様々あるが、いずれも左右からの接触は主人公にとっての脅威となる。上から踏むか下から突き上げるかでこれらに攻撃可能。スタートからゴールまで任意ペースでのスクロールが可能、但し後ろには戻れない。マップ右端のゴールに単純に到達するだけで次のステージに移動できる。
 時間制限があるが緩めであり、故にコイン集めや隠しゾーンの捜索が可能。残機制。100コインで残機+1のほか、1UPキノコによっても残機が増やせる。ライフ制は取っていない代わりに、巨大化状態だと1回だけキャラロスから護ることができる(ツインビーの弾、魔界村なども似たような仕掛けがあり、これらは2ダウンシステムと呼んでみたい面もある)

02: ツインビー(シューティング)
 上下左右移動、主として敵を撃つための弾を発射する(空中、地上と2種)。
 敵の種類は様々で、基本は自機に対する体当たり。かわすか倒すかでこの危険を回避する。スタートからゴールまでは強制スクロール型(したがって時間制限はもちろんない)。ゴール地点にはボスが出現しこれを撃破するとクリアという目標設定。ステージ制。初期状態の自機は貧弱なため、各種パワーアップをしつつ進めて行く。
 残機制でライフ制は取っていないが、相手の「弾」が当たったときにはアームが外れるだけで1回はキャラロスを免れる仕掛け有。

03: ストリートファイターII(格闘ゲーム)
 キック、パンチ、ジャンプにコンボ技が主人公の操作。
 相手も同様の攻撃をしてくるので、これを防ぐなりかわすなりする回避強要。打撃によって相手のHPを0にするという目標設定。アーケード系故に時間制限付き。ステージ制。アイテム強化はなく純粋に手さばきのタイミング勝負。ステージが後の敵はやはり難易度が高く設定される。

04: フラッピー(アクションパズル)
 上下左右移動、岩を押す、たまに睡眠キノコを投げる、が主人公の操作。
 ステージ制で、ブルーストーンを押してゴールまで持っていくという目標。これはパズルで構成されているが、ぱっと見で手順が明瞭なものも多々。簡単にクリアされては困るので、ユニコーン等の敵さんを配置し主人公の邪魔をする。しかし敵の動きをまったりと待たれても困るので時間制限を導入。

05: イース (アクションRPG)
 上下左右での操作。(自発操作)
 フィールドに敵とは接触によって1回の攻撃の応酬が行われるが(ハイドライドスタイル)、向きが重要となる。但し主人公が近づいてくるのを察知するとすぐに主人公の正面を向く。敵のレベルはまちまちで、強い敵とは戦わないように回避する必要がある。(強要操作)
 RPGであり、敵を倒して経験値を稼ぎレベルアップして強くなることができるほか、武具の購入でも強化できる。
 ステージ性ではなくエンディングを迎えるまで街や地上や洞窟をうろつく事になる自由冒険スタイル。時間制限は無い。ライフ制。

 ここに書いたのは基本要素的観点におけるゲームの構造であって、ゲームそのものの仕様ではありません。つまり、アクション性のあるゲームは常にこのようなレベルでの骨格抽出が可能、言い換えるとこうした骨格を持ちうる事(※但し、操作は手さばきによることが最大の前提)こそがアクションゲームの最低条件と言える訳ですが、これらは最低限のゲーム性を保証し、作品としての方向性を定義するだけであって、ゲームそのものの面白さとはまた別物です。それら面白さは細かいゲームルールや操作性、ステージメイキングなどなど多くの肉付けによって初めて綜合的に実現されるものです。スーパーマリオは名作ですが、上記に記述した構造をなぞるだけで誰しも同様の評価を持ちうるスーマリ系作品が作れるわけではない、というわけですね。当然ですが。
 こうした骨組みと肉付けの概念をしっかり抑える事で、皆さんも構造的にオリジナルのアクションゲームが作れるようになることでしょう。

5. 終わりに

 以上で記事は終わりですが、今回指摘した基本構造はその「手さばき」という観点を取り除く事により、違った分野に適用することも可能となります。近いうちにその記事もお届けすることになるでしょう。



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