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■ ゲームシナリオ考 - Updated: 2001/3/2
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1. はじめに 2. ゲームシナリオ? 3. シナリオには流れがある 4. 部分としての起承転結 5. 全体における「起」-物語のつかみ 6. 冒険の動機 7. 登場人物間の相関関係 8. 展開 9. 両極の存在できるコンピュータゲーム 10. 自由性を与えるためのシナリオ 11. 移入の構造 12. ACTOR 13. シナリオの発想法 14. プレイ時間を意識した組み立て 15. シナリオの罠 16. まとめではないけれど
「RPGを作りたいが、どういう物語にすれば良いものやら」、「試しに作ってはみたものの、どうも今イチなんだけど、どのように直せば良いのか分からない」などなど、物語系ゲームを作る人はいろいろ悩むと思います。こういう時に知っておくと便利なのはシナリオの構築法です。想像力はこれらを土台として初めて活かされるものであって、100%頭の中の知識+想像力だけで作ろうと思うと、途中でつまるか、気がつかず既存ゲームのクローン的なものを作ってしまいがちです。 以下は、シナリオを作る際に留意しておくべき幾つかの事を、主に(コンピュータ)ゲームシナリオという分野を想定して私なりに紹介、解説したものです。講座ではないため、ページの読了後に「……えーと、だから何?」と思われるかも知れませんが、検討項目を列挙するというコンテンツなのでこればかりは仕方がないです(^^;)。
(コンピュータ)ゲームシナリオも、劇作や小説で言うところのシナリオには変わりありませんが、読み手の操作によって結末が変わると言うインタラクティブ性はTRPGを除いた他のジャンルには殆ど存在しえないものですし、また何より読み手を楽しませるエンターテインメント色が強いものですから、必然的にドラマチックシナリオを書くことになります。私たちが普段過ごしている、連続的日常生活は普通ゲームシナリオにはなり得ません。たまにVNなどで存在はしますが、これはノベルであってゲームではないという説を推しますし、選択肢を色々付けてゲームっぽくしてみたところで、おそらく30分としないうちにエンディングまで行ってしまうものでしょう。
1本のシナリオには、始まりと終わりが必ず存在します。始まった後しばらくして、何らかの事件等が発生して徐々に盛り上がり、最後に何らかの形で収束するようになっています。この流れを大まかに、いくつかに区切る事ができます。3分法とか4分法とか呼ばれるものがそれで、誰でも知っている「起-承-転-結」の区切り方は4分法、世阿弥などの世界で用いられるのは「序-破-急」の3分法です。他にも鷹月の用いている5分法(ドラマツルギーの手法)などの分け方があります。これらは切り方が違うだけで、盛り上がりの流れについてはすべて同一です。 とりあえず本ページでは、4分法に基づき考えていきます。
盛り上がりとは、だいたいの場合、緊張感と解する事ができます。「起」に始まり「承」に続き、少しずつ盛り上がりはじめて「転」で一気に緊張感の連続となり(「ヤマ」と呼びます)、「結」で一気にその緊張感が解放されます。 これは物語全体の流れとして存在しますが、同時に物語の部分部分についてもこの関係は成立しています。ゲームでも映画でも連想して頂ければ分かると思いますが。実にいろんな盛り上がり(ヤマ)があり、それらは終わりに近づくに従って少しずつドラマチックの度合いを増していき、やがて物語最高の大ヤマ(クライマックス)を迎えます。これより後にはヤマはありませんし、あってはなりません。クライマックスが退くその瞬間が、俗にカタルシス(浄化)とも呼ばれます。 ともあれ長いドラマチック作品は、「起-承-転-結」のサイクルをいくつか持っている(時には多重に)と頭に入れておいて下さい。
シナリオ全体における「起」の役割は、もちろん導入です。物語全体の世界観を説明し、主人公とその周りの人物を登場させていきます。そしてまた、ドラマチックシナリオの場合は、最初の受難(Aタイプ)・あるいは特別な出会い等(Bタイプ)がここで発生したりします。 このフェーズを私は「つかみ」という言葉で呼んだりもします。いかに読み手に、先を読みたくなる気持ちにさせるかはこの部分で行わせるものです。シナリオの書き手として極めて重要なところで、先がいかに面白くなろうが、こんな所で読み手の関心を失わせてしまえば失敗となります。とはいえ、つかみに失敗しているような作品の大方は、その後もつまらない展開になるものですが。 ここで考えるべき事は、適切な舞台配置、登場人物間の相関関係の設定と提示、そして物語の冒険動機(スターター)の3点です。
物語の始まりは、たいてい平衡状態から始まります。必ずしも平和というわけではないのですが、雰囲気的には落ち着いている状態です。ところが始まって少しして、そんな平衡状態が崩れ始める事で、にわかに物語が滑り出していくのです。 先ほどAタイプ、Bタイプと書いておいたものがそれです。本当はもう少し導入のタイプはありますが、主流派はこの二つです。
まずAタイプ(受難/欠如)を見ていきましょうか。これは、主人公あるいは主人公に関わる誰かの受難、という意味です。必ずしも唐突に難を受けるのではなくて、受難を受けるべき人物がしかるべき行動を取ってしまったから発生するケースも存在します。
Bタイプ(出会い/移動)は、Aタイプに比べて緩やかなスタートとなります。「旅の途中で、おせっかいで助けた剣士とそのまま行動を共にする(スレイヤーズ)」、「偶然、泉で姫と出会ってしまったことがキッカケで、レースに参加することになる(ロマンスは剣の輝き)」、「1年が経った。今年も銀河一周レースの開催時期がやってきた…(ナイキ)」 動機に関しては一先ずここで止めておきます。ともかく、主人公が動くためには、何らかの仕掛けが必要なのだと頭に入れておいてください。
登場するキャラクター(基本的には人間ですが、そうでない時も多々あります)たちは様々な立場を持っています。それは主人公にとって味方だったり敵だったり、協力者だったり。状況によって立場の変わる場合もあれば、敵から味方、あるいはその逆に移行する場合など、実に多彩です。面白い物語イコール「これらが多彩に組み合わさっていて、それが進行とともに変化していく物語」と思って構いません。 この組み合わさりを、物語のコンフリクト(葛藤)構造と呼びます。 この構造の基本は、2者間にとっての「対立」「協調」関係から始まります。それらが組み合わさっていく中での「対立(あるいは競合)」部分がドラマを引き起こすことになります。 コンフリクト構造はかなり細かく分類し、紹介する事が可能なのですが、それだけで膨大な分量を必要としますので、ここではごく基本的な二つを述べていくに留めます。
[1] 二極対立
[2] 三角関係 対立の解消は、なにもその相手の立場が弱くなる事で起きるとは限りません。2者間の対立だったものが、共通する敵である第3者が登場してきたことで、突然対立から協調へと移る場合も存在します。こういったバランスが物語の進行にともない次々変化していくと、先の展開が読めない面白い話ができるものです。
起承転結や葛藤構造によって、ドラマチックストーリーが生み出されると書きました。ただしここまでは単に構造の骨格を示したのみで、では具体的にどのような話にすれば良いのかについては、ここから述べることにします。 ドラマチックとは「劇的」という意味ですが、劇的な状態とは具体的に何を差すのでしょうか。これについては、私が以前紹介した「劇作家のための、シチュエーション36の分類/ポンティ」が非常に参考になると思います。これで全てを網羅できているとは思いませんが、それでも大部分を当てはめる事が可能です。こうしたパターンを知っておくと、製作はだいぶ楽になるでしょう。 その上で全体構造を考えていきます。 ドラマチック物語のもっとも基本となるパターンは、次の二つです。
[1] 欠如→欠如の解消
イコールではありませんが、前者が悲喜劇、後者が悲劇のカテゴリに属すると言ってもそれほど間違ってはいないかと思います。[1] は、これも昔話特有のパターンなのですが、「物語で失われたものはかならず形を変えて戻ってくる」というものです。序盤で姫がさらわれれば、最後はその姫を助けて元通りの平和を打ち立てますし、失恋あるいは大喧嘩で苦しんで最後にはまた仲直りするというお決まりドラマもこのパターンでしょう。要するにはハッピーエンド構造なわけで、この欠如の度合いが高ければ高いほど、その反動で得られる感動も増す…というのが一般的なところです。
ここまで自分で書いていて見直してみたら、これはゲームシナリオ考というより、単なるシナリオ考ですね(苦笑)と言う事で、早めにゲームとの関連を出しておきましょう。 コンピュータゲームのウリの一つは先ほどインタラクティブ性である、と書きました。バッドエンドはそれはそれで独特な終わり方に酔えたりするものですが、キャラクターたちは救われないし、気分もスッキリとはしません。特に、その世界のキャラクターに感情移入した場合、「彼女は幸せにしなくちゃ」「彼女とはっぴっぴにならなくちゃ」という事で、まだ見ぬハッピーエンド目指してプレイを継続することになります。小説の世界では、予定調和的に1本のハッピーしか存在しえなかったものが、現実としてバッドを散りばめることで尚更、ハッピーへの重みを出すことが可能になるのです。(代償として、どれが本当の歴史なの?という議論もしばし発生しますが) 無論この場合、バッドエンドにもハッピーエンドと同様、或いはそれ以上の実感を与えてあげる必要があります。昔のAVGはシニゲーとかいう呼び方で、選択を誤るとすぐにバッドエンドとなるものがありましたが、これはただのハズレENDであり、エンディングというようなものではありません。 バッドエンドに重みを与えているゲームは色々存在しますが、やはりリーフの「雫」はこの点が非常に優れていたと言って良いでしょう。
ゲームは多くの場合、プレイヤーが主人公を操作する、という形を取ります。ストーリー系で完全に主人公の行動のすべてをプレイヤーに任せるものは存在しませんが、最低でも見せ掛けの選択権は与えてくれるものです。これにより、プレイヤーは他の小説などのメディア以上に、物語世界に主人公を介して没入ができるようになるのです。 ただし、その行動(アクション)に対しては、しかるべきリアクションを返してあげなくてはいけません。こうして、メインストーリーの中に、それを補佐する、あるいはそれから多少外れていくサブシナリオ、あるいはフレーバーというものを入れることになるのです。これがゲームシナリオの一つの特徴になります。この形態については、ゲームデザイン方面に踏み込まざるを得ないのでこれ以上は述べませんが、拙作の「AVG型分類」が参考になるはずです。AVGと銘打ってはいますが、ストーリー系のゲーム全般(RPGでも、SLGでも)にそれらを適用することが可能なはずです。
物語をドラマチックだと感じるとき、度合いはそれぞれあると思いますが、読み手は既に物語世界に没入しています。この没入の仕掛けは先に述べたとおり、インタラクティブ性にあるのですが、これはあくまで、プレイヤーと主人公とを結合するだけであって、十分条件ではありません。強烈に没入させるには、次のような要素を物語に埋め込む必要が出てきます。
[1] 共感
[2] 記号化/憧れ
[3] 萌え
[4] ヒーローとの同一化/ミミクリ これらは非常に有効ではありますが、主体として移入させた場合、人によっては作り手の恣意も見透かされてしまうことでしょう。はっきり言うと作品が薄っぺらになります。物語において重要なのは、やはりテーマ(主題)とモチーフ(動機)です。あくまで自分の描きたい話があって、その中でこうした要素を絡めていく、という位が良いのです。
「物語にどれだけのキャラクターを出せばよいか」という質問に対する回答は簡潔明瞭です。「そのキャラクターが居なくても作品を成立させられるのであれば、そのキャラクターは本筋に重要ではない」 物語全体に登場するキャラ数が少ないと、世界が狭く感じられてしまう事があるため、ある程度の人数はあると望ましいのは確かですが、無用に多くなりすぎても、かえって邪魔になるだけです。一度ディテールを描いたキャラは、基本的には最後まで面倒を見てやらねばなりませんが、気が付くとそれができなくなってしまう事がままあります。 かかる状況を解決するには、登場人物の切り分けをしっかりすれば良いのです。劇作や映画の切り分けである「主役(主演)」、「脇役」、「端役」、「その他大勢」、この切り方で私も良いと思います。
[1] 主役
[2] 脇役
[3] 端役
[4] その他大勢 ゲームシナリオの場合、特にキャラごとのマルチエンディングを持つ作品の場合は、状況によってキャラクターたちの扱いが変わってきてしまうので、ちょっと切り分けは厄介ではありますが、各ルートごとに切り分けの作業を試してみても損はないでしょう。
今まではシナリオを組み立てる上で知っておくと良いこと、といった感じで挙げてきまして、さて肝心の物語はどうやったら思いつけるのか、についてはあまり触れないできました。 この部分こそが一番肝心と言いますか、結局のところ「表現したいと思った衝動(=モチーフ)」があって、そこから軸(テーマ)を作り、それを消化するように物語を書く事が全てなのです。ゲームシナリオを書きたいというのなら、どういう物語を書きたいのか。これについて詰めていく必要があります。 テーマ設定と言うと、何だか難しそうに思えてしまいますが、もう一段階前のモチーフに戻って、素直に考えてみれば、テーマは自然とできあがるものです。
モチーフとは次のようなもので構いません。 ここでは抽象的なものを避け、具体的に思うまま挙げています。そちらの方が楽だからです。こうして挙げて行くだけで、自動的にテーマが決まっていきます。→「メイドさんと主人公との心の絆を描いた話にしよう、うんうん」 まあ、極端な記号ゲー化していく要素があるのはさて置いて、テーマと聞いて、変に文学的、思想的、モラル的なものを考えなくちゃいけないと考えている人もいますが、そこから考えていくのは難しいものです。そういったものを書きたければ、物語の中に織り交ぜる組み込むことはいくらでも可能なので、さしあたっては自分の書きやすいジャンルでテーマ設定まで進めた方が良い、と思うのです。 ただし!ここで注意。書きたいものを書いてよい、とは言ってもゲームなり作品は人に吟味されるものである以上、作り手の自己満足で終わってしまう作品は失敗です。ゲームであるならエンターテインメントは必須ですから、あくまで人に楽しんでもらう事を念頭に置いて、組み立てていくべきでしょう。
これはちょっと余談気味ですが…、ところで私はゲームを作る際、規模を見積もります。それは抽象的に「大作」とか「小規模」というのではなくて、もう少し具体的に「プレイヤーが3時間遊んでくれるような」などという按配です。あまりに長くなりすぎると作るのが大変になるでしょうし、短いと遊び手が満足してくれないわけで、その中間でシナリオと相談していきます。思いつきのシナリオの初期状態は出だしと見せ場、暫定的な結末くらいしか決まっていない事が多く、その間をどのように埋めていくのか考えることになります。ことRPGの場合は、1つのヤマに1時間程度ある事が望ましく(重要なイベントの場合は2時間)、SLGの1ステージは30分程度が望ましいという前提を頭に入れて、ゲームデザイン、およびシナリオを考えていきます。
TRPG初心者が、GMとしてセッションシナリオなどを作ろうとすると、しばし「押し付けの強い物語」を作ってしまうものです。特に小説書きをやっていた人はその傾向が強く、今まで文章だけで自分の考えた通りにキャラを動かして発端から大団円まで書いていたものが、プレイヤーという自由意志が物語の中に介入する事を忘れ、あるいは想定できず、その結果、物語そのものは大団円で終わったとしても、プレイヤーからは苦い評価を貰うことになります。 TRPGシナリオでは何を考えて作るべきか?それは、プレイヤーの自由な行動をある程度想定し、それに対応する柔軟なストーリーラインを考えておくべき事、それに加えて、TRPGシステム特有のゲーム性(ダイスロール、戦闘など)を活かすようにすること、この2点です。TRPGはゲームであって小説ではありません。 ゲームシナリオもこれと同様です。コンピュータゲームというジャンルの持つ色々な表現方法、およびゲーム性を活かしつつ、その中で物語を織り込んでいくのが理想的です(VNなど、そもそも他のゲーム性を入れないジャンルは除きます)。 このあたりは、拙作の「ゲームの基本6要素」を参考にして下さい。物語系ゲームにおいて、物語性は一番特殊な位置を占める事は間違いないとしても、あくまでゲーム性(=面白さ)の一つにしか過ぎないという事は念頭に入れておくべきでしょう。RPGやAVGがストーリーによってのみ構成されるものではないことは、ローグやミステリーハウス等を挙げれば充分でしょう。
駆け足で、シナリオ製作における着目点を挙げてきました。個々の説明が少ないために、いまいち実感が湧かなかったかもしれませんが、個々とは全体の一部である以上、まずは全体だけぐるりと見渡した記事を書いておき、それから個々を詳細に詰めていくことで、最終的にシナリオ製作論としてまとめられるかなあ、という見通しのもとに書いた記事だったりします。 もっとも、その各部分にしても、世界観の組み立てやインスピレーション的発想法(3題話)、シナリオの仕掛けなどなど、記述していない部分も多々あると思いますが、これは続きを書くときにでも、ということで(^^; この記事を書くにあたって、しばらく昔に読んだものですが桐生茂氏の「シナリオメイキングガイド」、朱鷺田祐介氏の「ファンタジーメイキングガイド」は大いに参考になったと思います。というより、これを元に、TRPGシナリオからゲームシナリオへと拡張させていこうかなと考えつつ書いたのですが、ここまで書いてきた所では、その特色が殆ど出せておらず、私ももう少し考察をしないといけないな、と思っている所です。 感想などありましたら、ぜひぜひ掲示板やメールなど、お待ちしています。 - 鷹月ぐみな [▲ INDEX]
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